結論:一人親方も、個人事業主として許可を申請できます
建設業許可は法人に限られた制度ではありません。従業員を雇わず一人で建設業を営む方も、要件を満たせば個人事業主として申請を検討できます。ただし、長い現場経験や資格があるという事情だけでは決まりません。経営経験、許可業種に対応する資格・実務経験、営業所、財産面、保険の適用関係を、申請時点の資料で確認します。
本記事では分かりやすさのため、申請前の確認を6つに整理します。国土交通省が示す法令上の枠組みは、建設業法第7条の4つの許可要件と第8条の欠格要件です。以下の「6つ」は、その条文数を機械的に数えた法定の6要件ではなく、一人親方が準備しやすいよう実務上の確認事項をまとめたものです。
「一人親方」は建設業許可の申請区分ではありません
一人親方は、一般に、労働者を常時雇わず自ら工事に従事する事業者を表す言葉です。建設業許可では申請者を個人事業主として扱い、「一人親方許可」という別区分はありません。
申請にあたっては、まず次の区分を整理します。
- 営業所の所在地に応じた大阪府知事許可または国土交通大臣許可
- 元請工事で下請へ発注する金額等に応じた一般建設業または特定建設業
- 実際に請け負う工事内容に対応する許可業種
建築一式工事以外では、原則として一件の請負代金が税込み500万円未満の軽微な工事だけを請け負う場合、許可を要しないことがあります。ただし、契約の分割や注文者からの支給材料も確認するため、見積額だけで結論を出しません。500万円基準の詳しい考え方もご確認ください。
一人親方が確認したい6つの事項
1. 経営業務を適正に管理できる体制
個人申請では、本人または登記した支配人のうち一人について、建設業に関する経営経験などを確認します。代表的な基準は、建設業について5年以上、経営業務の管理責任者としての経験を有することです。権限を委任された地位や経営を補佐した経験など、別の確認方法もあります。
職人としての年数と、建設業を経営・管理した年数は同じではありません。 個人事業主として請負契約を結び、売上や経費を管理していた期間、以前の会社での役職と権限などを資料で確認します。経営業務の管理を担う人の要件もご覧ください。
2. 建設業を営む営業所の実体
建設業の営業所は、見積り、入札、請負契約の締結などを行う事務所です。開業届上の住所や郵便物の受取場所だけでは足りません。大阪府への新規申請では、建物全景、入口の商号・名称、固定電話・事務機器・机などを、申請直前3か月以内の写真で確認します。
自宅や賃貸物件も一律に不可ではありませんが、次の点を個別に確認します。
- その場所を事務所として使う権限があるか
- 建設業の営業を行う作業スペースや設備があるか
- 居住部分やほかの事業者の区画との関係を説明できるか
- 賃貸借契約、管理規約、所有者の承諾に問題がないか
居住用限定の契約や、借主と申請者が異なる場合は、使用承諾等を求められることがあります。「自宅だから使える」「看板だけでよい」とは判断せず、実体と使用権限を確認します。
3. 許可業種に対応する営業所技術者等
営業所には、許可を受けようとする業種に対応した資格または実務経験等を持ち、常勤して専ら職務に従事する営業所技術者等を置きます。「営業所技術者等」は2024年12月13日以降の現行名称で、以前は専任技術者と呼ばれていました。
一人親方の場合、個人事業主本人が営業所技術者等になることも可能です。さらに、本人が経営業務の管理責任者等と営業所技術者等の双方の基準を満たす場合は、同一の営業所内に限って兼ねられることがあります。
ただし、兼任は自動ではありません。取得業種、資格・実務経験、常勤性、ほかの会社・事業所での職務、工事現場との兼務を確認します。営業所技術者等の役割と確認資料もご覧ください。
4. 一般建設業の財産的基礎
一般建設業では、請負契約を履行できる財産的基礎または金銭的信用を確認します。申請時点で、主に次のいずれかに該当するかを確認します。
- 直前の決算で自己資本が500万円以上ある
- 金融機関の預金残高証明書により500万円以上の資金調達能力を示す
- 許可申請直前の過去5年間、許可を受けて継続して営業した実績がある
新規申請では上二つが中心です。大阪府で残高証明書を使う場合は、発行日ではなく残高日が申請日前4週間以内であることを確認します。開業直後は開始貸借対照表と確認書類を組み合わせるため、「口座に500万円あれば必ず足りる」とは判断しません。
特定建設業の財産要件は一般建設業と異なります。本記事の500万円の説明をそのまま当てはめず、予定する元請工事と下請発注額から区分を先に確認します。
5. 社会保険等の適用関係
建設業許可では、健康保険、厚生年金保険、雇用保険について、申請者の事業所が適用対象となる場合に必要な届出をしていることを確認します。一人親方や個人事業主だから、すべての保険が一律に不要になるわけではありません。
本人だけか、従業員や家族従事者がいるかで扱いは変わります。健康保険・厚生年金保険は事業形態と人数、雇用保険は実際の雇用を確認します。家族も一律に判断せず、指揮命令やほかの従業員との働き方を見ます。建設業許可と社会保険加入も参考にしてください。
また、一人親方等の労災保険特別加入は、業務中の災害に備える重要な制度ですが、上記の建設業許可要件とは別に確認します。本来の労災保険の対象とならない事業主・自営業者等について、一定の要件の下で任意加入を認める制度です。加入対象、手続、現場側の運用は、申請時点の案内を確認してください。
6. 欠格要件と請負契約に関する誠実性
個人申請では、本人や支配人などが建設業法第8条の欠格要件に該当しないこと、請負契約の締結・履行について不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないことを確認します。
欠格要件には、破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない場合、一定の許可取消処分や刑事処分から所定期間を経過していない場合、暴力団員等が事業活動を支配している場合などがあります。確認対象と期間は事案ごとに異なるため、心当たりがある場合は申請前に現在の法令と事実関係を確認します。
一人親方の申請では、経験を書類でつなげることが重要です
申請では「以前から一人で仕事をしている」という説明だけでなく、経営経験、営業実績、申請業種の施工経験を期間ごとの資料で示します。主な例は次のとおりです。
- 所得税の確定申告書、事業開始申告書、個人事業税の納税証明書
- 工事の契約書、注文書・請書、請求書と入金を確認できる資料
- 国家資格者証、卒業証明書、実務経験証明書
- 住民税課税証明書など、本人の常勤性を確認する資料
- 営業所の賃貸借契約書、使用承諾、写真、固定電話等の資料
組み合わせは、申請業種、経験時期、当時の許可、電子申告の有無などで異なります。書類名がそろっていても、工事内容や期間を確認できなければ追加資料が必要になることがあります。
不足する過去資料を、後から当時作成したように作り直すことはできません。事実と異なる契約書・注文書・請求書を用意したり、申請対象と異なる工事を経験として記載したりせず、残っている資料と別の確認方法を先に整理します。
名称が一人親方でも、働き方の実態は別に確認します
個人事業主として申告し、契約書に「請負」と書かれていても、労働法上も必ず事業主になるとは限りません。仕事を断る自由、業務時間、代替性、報酬、機材負担、発注者の指揮監督など、実態を総合して判断します。
実態として特定の会社の指揮命令を受ける労働者に当たる場合は、雇用保険や社会保険、労災保険の扱いが変わることがあります。建設業許可を申請できるかという判断と、労働者性の判断を混同せず、必要に応じて国土交通省の働き方自己診断チェックリストや所管機関の案内を確認します。
許可取得後も、個人事業主として管理が続きます
許可取得後も、毎事業年度終了後の決算変更届、商号・営業所・営業所技術者等等の変更届、5年ごとの更新が必要です。許可要件も継続して維持します。
将来法人化する場合、個人名義で受けた許可が当然に新しい法人へ移るわけではありません。事業承継の認可を利用できるか、法人として新規申請を行うかを検討し、許可の空白期間が生じないよう法人設立前から順序を確認します。会社設立支援では、許認可を見据えた事業目的や設立手続も案内しています。
申請前チェックリスト
- 今後請け負う工事の内容、金額、必要な許可業種を整理した
- 大阪府知事許可か国土交通大臣許可か、一般か特定かを確認した
- 個人事業主本人または支配人の経営経験を確認した
- 経営経験の期間を示す確定申告書と工事書類が残っている
- 営業所技術者等となる人の資格または実務経験を確認した
- 一人で二つの役割を担う場合の常勤性・兼務状況を確認した
- 営業所の使用権限、設備、商号表示、写真を準備できる
- 財産的基礎をどの資料で確認するか決めた
- 健康保険・厚生年金保険・雇用保険の適用関係を整理した
- 欠格要件、許可取得後の届出、将来の法人化まで確認した
現在の状況を3つの質問で整理したい方は、建設業許可 要件かんたん確認もご利用ください。診断結果だけで許可の可否を確定するものではありません。
まとめ
一人親方も、個人事業主として建設業許可を申請できます。ただし、一人で事業をしていること自体が要件を軽くするわけではありません。経営経験、営業所、営業所技術者等、財産的基礎、社会保険等、欠格要件・誠実性を一つずつ確認し、申請時点の事実を書類で示します。
本人が経営と技術の双方を担う場合は、二つの経験の区別、兼任、常勤性、資料の残り方が重要です。受注が決まってから慌てないよう、確定申告書、工事書類、資格証、営業所資料を先に確認してください。最終的な許可判断は申請先の行政庁が行います。
最新情報の確認先
本記事は2026年9月11日時点で、次の一次情報を確認して作成しています。法令、手引き、必要書類、窓口運用は変更されることがあるため、実際の申請時点でも最新版をご確認ください。
- 国土交通省「建設業の許可とは」
- 国土交通省「許可の要件」
- 大阪府「建設業許可申請の手引き」
- 大阪府「建設業許可申請の手引き(令和8年3月改訂版)第2章」
- 大阪府「建設業許可申請の手引き(令和8年3月改訂版)第3章」
- 大阪府「建設業許可申請書類(個人用)」
- 国土交通省「建設業における社会保険加入対策について」
- 厚生労働省「労災保険への特別加入」
- 厚生労働省「労働者とは」
- 日本年金機構「適用事業所と被保険者」
よくある質問
従業員がいない一人親方でも建設業許可を取得できますか。
従業員がいないことだけを理由に申請できないわけではありません。個人事業主本人または支配人の経営経験、営業所技術者等、営業所、財産的基礎などを確認し、必要な事実を書類で示せるかを整理します。
個人事業主本人が経営業務の管理責任者等と営業所技術者等を兼ねられますか。
双方の基準を満たす人であれば、同一の営業所内に限って兼ねられる場合があります。ただし、申請業種に対応する資格・実務経験、常勤性、ほかの職務との兼務状況を確認する必要があり、一人親方だから自動的に兼任できるわけではありません。
自宅や賃貸住宅を建設業の営業所にできますか。
自宅や賃貸物件であることだけで一律に不可とはされませんが、事務所として使う権限、建設業の営業を行う実体、商号表示、固定電話や事務機器などを確認します。居住用に限定された賃貸借契約や管理規約がある場合は、使用承諾等が必要になることがあります。
一人親方は社会保険や労災保険に加入していないと許可を取れませんか。
健康保険・厚生年金保険・雇用保険は、事業形態、従業員数、雇用の実態ごとに適用関係を確認します。適用対象外であれば、その状況を申請上確認します。一人親方等の労災保険特別加入は安全確保のために重要な別制度であり、建設業許可の6つの確認事項そのものとは分けて整理します。
関連ページ
- 大阪の建設業許可申請サポート — 許可区分、取得要件、必要書類、料金、申請の流れを確認できます。
- 建設業許可の要件と証明資料 — 法人・個人に共通する要件と、大阪府での資料確認を整理しています。
- 軽微な工事だけを営む営業所の注意点 — 許可のある営業所と無許可営業所を併設する場合の考え方を解説します。
- 料金案内 — 建設業許可申請に関する当事務所の基本報酬を確認できます。
- お問い合わせ — 現在の工事内容、経験、資格、営業所、手元の資料を分かる範囲でお知らせください。
一人親方の経験・資格・営業所・資料を順番に確認します。
許可を受けたい業種、今後の受注予定、個人事業の年数、資格、確定申告書や工事書類の残り方を確認し、申請までに整える事項をご案内します。




