2020年10月から、社会保険の届出状況が建設業許可の要件になりました
2020年10月1日施行の改正により、建設業許可の新規申請・更新では、「適正な社会保険への加入」が許可要件になりました。
建設業法施行規則第7条第2号では、健康保険・厚生年金保険については、適用事業所に該当するすべての営業所で必要な届出をしていること、雇用保険については、適用事業の事業所に該当するすべての営業所で必要な届出をしていることを確認します。
ここで大切なのは、すべての建設業者に同じ加入方法を求める制度ではないという点です。適用事業所・適用事業に当たるかを先に判断し、その事業所で必要な届出が済んでいるかを確認します。
また、許可行政庁が申請時に全労働者一人ひとりの被保険者該当性を最終判断する仕組みでもありません。ただし、許可上の確認単位が営業所であることは、各労働者について法令上必要な加入手続を省略してよいという意味ではありません。
建設業許可の要件全体と合わせて、自社がどの適用関係にあるかを整理してください。
申請前に、事業の形・雇用の実態・営業所の3点を整理します
「従業員が少ないから対象外」「建設国保だから問題ない」と保険名だけで判断すると、申請時に届出状況と確認資料がかみ合わないことがあります。最初に次の3点を整理すると、確認先と必要資料が見えやすくなります。
- 事業の形:法人か個人事業か
- 雇用の実態:誰を何人雇用し、どのような働き方をしているか
- 営業所:本店・支店等のどこが適用事業所または適用事業に当たるか
法人役員、個人事業主本人、同居親族、短時間労働者などは、立場だけでは被保険者に該当するかを決められない場合があります。記事の表を固定的な結論として使わず、現在の雇用契約、勤務実態、報酬、既存の届出を確認してください。
許可で確認される健康保険・厚生年金保険・雇用保険
建設業許可で確認する3つの保険は、対象と確認先が同じではありません。
| 保険 | 許可で確認する主な単位 | 主な確認内容 | 適用・手続の主な確認先 |
|---|---|---|---|
| 健康保険 | 適用事業所に該当する営業所 | 必要な適用事業所の届出、加入または適用除外の状況 | 年金事務所、加入する健康保険の窓口、社会保険労務士 |
| 厚生年金保険 | 適用事業所に該当する営業所 | 必要な適用事業所の届出と加入状況 | 年金事務所、社会保険労務士 |
| 雇用保険 | 適用事業の事業所に該当する営業所 | 適用事業所設置の届出と労働保険番号 | ハローワーク、労働局、社会保険労務士 |
健康保険と厚生年金保険は一緒に扱われる場面が多い一方、建設国保等の国民健康保険組合と厚生年金保険を組み合わせる場合があります。雇用保険は、健康保険・厚生年金保険とは別の適用基準で確認します。
法人・個人事業・一人親方で適用関係が異なります
次の表は申請前に確認するための概要です。個々の役員・従業員が被保険者になるか、任意適用や適用除外があるかは、個別事情により異なります。
| 事業形態 | 従業員の有無・人数 | 健康保険・厚生年金保険 | 雇用保険 | 主な確認先 |
|---|---|---|---|---|
| 法人 | 事業主のみを含む | 法人の事業所は原則として適用事業所。小規模という理由だけでは適用除外にならない | 労働者を雇用する場合に確認。役員だけで構成される場合は原則として適用除外 | 年金事務所、ハローワーク、社会保険労務士 |
| 個人の建設業事業所 | 家族従業員を除く従業員が常時5人以上 | 原則として適用事業所 | 労働者を1人でも雇用する場合は原則として適用事業 | 年金事務所、ハローワーク、社会保険労務士 |
| 個人の建設業事業所 | 家族従業員を除く従業員が常時5人未満 | 原則として強制適用外。ただし任意適用を受けている場合がある | 労働者を1人でも雇用する場合は原則として適用事業 | 年金事務所、ハローワーク、社会保険労務士 |
| 一人親方・従業員なし | 真に請負で働き、労働者を雇用していない | 国民健康保険または国保組合と国民年金が基本 | 通常は適用事業にならない | 年金事務所、市区町村・国保組合、働き方に応じた相談窓口 |
一人親方については、契約書の名称だけでなく、仕事の依頼を断れるか、作業時間や方法の指示を誰から受けるか、報酬がどのように決まるかなど、働き方の実態が重要です。名目は請負でも実態が労働者であれば、雇用する側の保険に加入する必要が生じる場合があります。
建設国保を利用している場合は、適用除外承認と厚生年金を確認します
建設国保などの国民健康保険組合に加入しているからといって、建設業許可で直ちに不適合になるわけではありません。また、法人化したら必ず協会けんぽへ切り替えなければならないと一律に説明することも正確ではありません。
法人や、家族従業員を除く従業員が常時5人以上の個人の建設業事業所でも、年金事務所で健康保険被保険者適用除外の承認を受け、国民健康保険組合と厚生年金保険へ適正に加入する組み合わせがあります。
申請準備では、次を分けて確認します。
- 現在加入している国保組合
- 健康保険被保険者適用除外の承認状況
- 厚生年金保険の適用事業所・被保険者の届出状況
- 建設業許可申請で使う事業所整理番号等の確認資料
加入している保険の名称だけで判断せず、年金事務所または社会保険労務士へ現在の適用関係を確認してください。
雇用保険と労災保険は、同じものではありません
雇用保険と労災保険をまとめて「労働保険」と呼びますが、建設業許可の社会保険要件として列挙される3保険に、労災保険は含まれていません。労災保険が重要でないという意味ではなく、許可要件としての確認と、労働保険の成立手続を分けて理解する必要があります。
建設業は、一般に労災保険と雇用保険の保険関係・保険料申告等を分けて行う「二元適用事業」です。建設の事業では、労災保険分と雇用保険分の保険関係成立届・概算保険料申告書を分け、提出先も異なるため、管轄の労働基準監督署・ハローワークへ確認します。
雇用保険は、労働者を1人でも雇用する事業では原則として適用事業になります。一方、個々の人が雇用保険の被保険者になるかは、所定労働時間、雇用見込み、役員・事業主・同居親族としての立場などを含め、別に判断します。
大阪府の新規申請・更新で確認する書類
大阪府の案内ページ(2026年3月30日更新)に掲載された「建設業許可申請の手引き(令和8年3月改訂版)」では、省令様式第7号の3「健康保険等の加入状況」と、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入確認書類の写しを申請書類として案内しています。2020年10月1日以後、これらの確認資料は提示ではなく提出が必要で、必要な確認資料がなければ申請を受け付けない取扱いです。申請日時点で、適用除外となる営業所を除き、適用対象の営業所について必要な加入・届出が済んでいる必要があります。
様式には、営業所ごとに加入済み、適用除外、本店一括適用等の区分を記載し、健康保険・厚生年金保険は事業所整理記号・事業所番号等、雇用保険は労働保険番号を記載します。確認資料は直近月または直近分の写しを提出し、被保険者整理番号や基礎年金番号はマスキングします。
健康保険・厚生年金保険の主な確認資料
加入先や現在の手続状況に応じて、次のような資料から該当するものを確認します。
- 納入告知書・納付書・領収証書
- 保険納入告知額・領収済通知書
- 社会保険料納入確認(申請)書(受付印のあるもの)
- 健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書
- 健康保険組合が発行した保険料領収証書と厚生年金保険側の資料
健康保険・厚生年金保険の資格取得届を提出した直後で標準報酬決定通知書がまだ届いていない場合は、日本年金機構の受付印がある「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」の写しで申請を受け付ける取扱いがあります。その後、標準報酬決定通知書の写しを提出する必要があり、その提出までは許可通知書が送付されません。
雇用保険の主な確認資料
- 労働保険概算・確定保険料申告書と領収済通知書
- 労働保険料等納入通知書と領収済通知書
- 許可申請時直前の雇用保険料の納付に係る、労働局発行の労働保険料等納入証明書(使用目的が建設業許可であること及び提出先を確認)
- 設置直後の場合は、雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)または提出先の受付済印がある雇用保険適用事業所設置届の事業主控
書類名、受付方法、代替できる資料は改訂されることがあります。古い申請時の控えだけで準備を進めず、大阪府の最新手引きと現在の届出状況を照らし合わせてください。
未加入・届出漏れが見つかったときの進め方
申請準備で未加入や届出漏れの可能性が見つかっても、「直ちに必ず許可が取り消される」「過去にさかのぼって加入すれば必ず許可される」と先に結論を出すことはできません。
次の順で事実を整理します。
- 本店・支店等の各営業所が、どの保険の適用事業所・適用事業に当たるかを確認する
- すでに提出した届出、適用除外承認、保険料の納付状況を確認する
- 年金事務所・ハローワーク等へ個別の適用関係を確認し、届出書類の作成・提出代行が必要な場合は社会保険労務士と役割を分ける
- 建設業許可の申請時点の要件充足、受付可否、必要な処理順と大阪府へ提出する資料を整理する
個別の適用関係は年金事務所・ハローワーク等へ確認し、社会保険・労働保険法令に基づく届出書類の作成・提出代行は原則として社会保険労務士の業務領域です。当事務所では建設業許可の申請準備として、許可上どの営業所について何を示す必要があるかを整理し、必要に応じて確認先や他の専門家との役割を分けてご案内します。
申請前チェックリスト
- 法人・個人事業の別を確認した
- 本店・支店等、建設業を営む営業所を一覧にした
- 営業所ごとの常勤人数と雇用関係を確認した
- 健康保険・厚生年金保険の適用事業所かを確認した
- 雇用保険の適用事業かを確認した
- 建設国保等を利用している場合、適用除外承認と厚生年金保険を確認した
- 省令様式第7号の3に記載する区分と番号を確認した
- 直近月・直近分の加入確認資料を用意した
- 被保険者整理番号・基礎年金番号をマスキングし、事業所整理記号等と労働保険番号は確認可能な状態にした
- 不明な適用関係は年金事務所・ハローワーク等へ確認し、届出書類の作成・提出代行が必要な場合は社会保険労務士へ確認した
よくある質問
代表者だけの法人でも、健康保険・厚生年金保険の確認は必要ですか。
法人の事業所は、事業主だけの場合を含めて健康保険・厚生年金保険の適用事業所となります。小規模、代表者だけという理由だけで適用除外にはなりません。ただし、代表者本人の被保険者該当性や加入する健康保険の種類は、報酬や現在の加入状況等を踏まえて個別に確認します。
従業員のいない一人親方も、3つの保険すべてに加入しないと建設業許可を受けられませんか。
一律に3つすべてへの加入が必要ということではありません。真に請負で働き、労働者を雇用していない一人親方では、国民健康保険または国保組合と国民年金が基本となり、雇用保険は通常は適用事業になりません。ただし、名目は一人親方でも実態が労働者に当たる場合などは別の確認が必要です。
従業員が5人未満の個人事業なら、社会保険の確認は不要ですか。
個人の建設業事業所で、家族従業員を除く従業員が常時5人未満の場合、健康保険・厚生年金保険は原則として強制適用事業所に当たらないことがありますが、任意適用を受けている場合もあります。また、雇用保険は人数基準が異なり、労働者を1人でも雇用する事業は原則として適用事業です。保険ごとに分けて確認してください。
建設国保に加入していると、建設業許可では不適合になりますか。
建設国保などの国民健康保険組合に加入していることだけで不適合とはいえません。健康保険被保険者適用除外の承認を受け、国保組合と厚生年金保険へ適正に加入する組み合わせがあります。適用除外承認と厚生年金保険の届出状況を確認します。
未加入や届出漏れが見つかった場合、手続をすれば必ず許可されますか。
加入義務、適用除外、届出状況、申請時点や確認資料によって対応が異なるため、手続をしたことだけで許可結果を断定することはできません。年金事務所・ハローワーク等へ適用関係を確認し、社会保険・労働保険法令に基づく届出書類の作成・提出代行が必要な場合は、原則として社会保険労務士と役割を分けます。大阪府の申請時点の要件、受付可否、必要資料の取扱いと合わせて申請時期を整理します。
最新情報の確認先
本記事は2026年9月1日時点で、次の一次情報を確認して作成しています。制度、様式、確認資料及び窓口運用は変更されることがあるため、申請時点の最新版をご確認ください。
- 国土交通省「許可の要件」
- 国土交通省「建設業における社会保険加入対策について」
- 国土交通省「建設業許可・更新における社会保険加入の要件化」
- 大阪府「建設業許可の手引き」
- 大阪府「建設業許可申請の手引き(令和8年3月改訂版)第2章」
- 大阪府「建設業許可申請の手引き(令和8年3月改訂版)第3章」
- 日本年金機構「適用事業所と被保険者」
- 日本年金機構「健康保険被保険者適用除外承認申請書」
- 大阪ハローワーク「事業所の方の雇用保険の手続き」
- 大阪労働局「労働保険の成立手続きについて」
- e-Gov法令検索「建設業法」
- e-Gov法令検索「建設業法施行規則」
関連ページ
- 大阪の建設業許可申請 — 要件確認から申請までの支援内容と料金を案内します。
- 建設業支援 — 許可、決算変更届、更新、経審、入札参加資格、CCUSの全体像を確認できます。
- 建設業許可の要件とは? — 申請前に確認する許可要件全体を解説します。
- 建設業許可の常勤役員等とは? — 経営経験、常勤性及び確認資料を整理しています。
- 営業所技術者等の役割・資格・実務経験 — 許可業種ごとの技術者要件を解説します。
- お問い合わせ — 事業形態、営業所、従業員数及び現在の届出状況を、分かる範囲でお知らせください。個人番号や保険証画像などの機微情報は送信しないでください。
営業所ごとの届出状況を整理して、建設業許可の申請準備を進めます。
法人・個人事業の別、営業所、雇用の実態及び現在お持ちの確認資料を整理し、建設業許可の申請で何を示す必要があるかをご案内します。個別の適用関係は年金事務所・ハローワーク等へ確認し、社会保険・労働保険法令に基づく届出書類の作成・提出代行が必要な場合は、原則として社会保険労務士と役割を分けて進めます。




