結論:決算前の新設会社も、要件と証明資料がそろえば申請を検討できます

建設業許可は、会社の設立から何年経過したか、決算を何回終えたかだけで取得の可否が決まる制度ではありません。設立直後の会社も、申請時点で経営業務を適正に管理する体制、営業所技術者等、財産的基礎、営業所、社会保険等、誠実性・欠格要件を確認し、それぞれを書類で示せれば申請を検討できます。

一方で、「新設会社だから簡単」「資本金を500万円にすれば必ず取れる」「代表者に現場経験があれば足りる」とは限りません。会社の現在の状態と、役員等が以前の会社や個人事業で積んだ経験を、要件ごとに分けて確認します。最終的な許可判断は申請先の行政庁が行います。

以下では、大阪府内だけに営業所を置く会社が大阪府知事へ一般建設業の新規許可を申請する場合を中心に説明します。特定建設業、複数都道府県に営業所を置く場合の国土交通大臣許可、事業承継の認可では、基準や手続が異なります。

最初に、3つの事実を分けて整理します

新設会社の相談では、次の三つが混同されがちです。

  1. 新しい会社の現状:役員、営業所、営業所技術者等、社会保険、財産状況
  2. 担当者個人の過去経験:前職や他社での経営経験、資格、施工実務
  3. 新しい会社の工事実績:設立後に会社名義で請け負った工事

新しい会社に決算実績や長年の工事実績がなくても、役員等の個人が持つ過去経験を確認できる場合があります。ただし、過去経験が自動的に新会社の実績へ移るわけではありません。誰が、いつ、どの会社で、どの立場で、どの業種の業務を行ったかを資料でつなぎます。

建設業許可全体の確認項目は、大阪府で建設業許可を申請する前に確認したい要件で整理しています。

決算前は、開始貸借対照表で財産状況を確認します

大阪府への一般建設業の新規申請では、新設法人が第1期の決算期をまだ迎えていない場合、通常の直前期の財務諸表ではなく、開始貸借対照表で設立時の財産状況を確認します。「決算ゼロ」は法令や手引き上の正式な申請区分ではないため、本記事では「第1期の決算期が未到来」と表現します。決算期到来後から確定申告期限までの申請は別の状態となるため、申請時点の取扱いを確認します。

開業直後の個人事業主も、初回の確定申告を待たなければ申請できないとは限りません。ただし大阪府では、新規個人の財産要件を開始貸借対照表と500万円以上の預金残高証明書で確認するため、新設法人と同じ資料構成ではありません。

一般建設業の財産的基礎は、倒産することが明白である場合を除き、主に次のいずれかで確認します。

  • 自己資本が500万円以上あること
  • 500万円以上の資金を調達する能力があること
  • 許可申請直前の過去5年間、許可を受けて継続して営業した実績があること

新設会社では、開始貸借対照表による確認か、金融機関の預金残高証明書による資金調達能力の確認が中心です。大阪府で残高証明書を使う場合は、発行日ではなく残高日が申請日前4週間(28日)以内であることを確認します。また、様式第20号の3「主要取引金融機関名」には、残高証明書を発行した金融機関名と支店名を一致させて記載します。

新設法人と決算後の法人では、確認方法が異なります

大阪府では、第1期の決算期が未到来の新設法人について、法人成立日現在の資本金額が500万円以上であることを開始貸借対照表で確認します。一方、第1期の決算を終えて確定申告期限を経過した後は、原則として申請直前期の財務諸表における自己資本、すなわち純資産合計額で判断します。そのため、設立時の資本金が500万円でも、決算後まで当然に同じ判定になるとは限りません。

新設時の資本金が500万円未満でも、金融機関が発行する500万円以上の預金残高証明書により資金調達能力を示す方法があります。いずれの方法でも、財産要件以外の許可要件は別に満たす必要があります。

特定建設業には別の財産要件があります。本記事の500万円基準をそのまま当てはめず、元請工事と下請への発注予定から一般・特定の区分を先に整理してください。

前職・他社での経験は、人物の要件として確認します

新設会社自体には長い営業実績がなくても、現在その会社で役割を担う人が、前の勤務先、別会社、又は個人事業で積んだ経験を使える場合があります。主に確認するのは、次の二つです。

常勤役員等に関する経営経験

法人では、常勤役員等のうち一人について、建設業の経営業務に関する経験等を確認します。代表的な基準は、建設業について5年以上、経営業務の管理責任者としての経験を有することです。役員であった期間だけで足りるとは限らず、その会社が建設業を営んでいた期間と、本人が経営に携わった立場・期間を確認します。

以前の会社での役員経験や、個人事業主として建設業を営んだ経験も検討対象になります。詳しくは建設業許可の常勤役員等に必要な経営経験と証明資料をご確認ください。

営業所技術者等に関する資格・実務経験

許可を受けようとする建設業を営む各営業所には、申請業種に対応する資格又は実務経験等を持ち、原則として常勤し、専ら職務に従事する営業所技術者等を置きます。前職での施工経験を使う場合は、単に「建設会社に10年勤めた」という在籍年数だけでなく、申請業種に該当する工事へ従事した期間と内容を確認します。資格、学歴、申請業種によって必要な実務経験年数は異なります。

営業所技術者等の役割・資格・実務経験も併せてご覧ください。

「他社証明」は、証明書一枚だけを指す制度名ではありません

実務でいう「他社証明」は、前職の会社や以前の事業で積んだ経験を、現在の申請に使うための確認をまとめて指すことがあります。しかし、これだけで完結する一つの公式制度や、万能な証明書があるわけではありません。

確認は、おおむね次の二段階です。

  1. 経験の内容・期間を確認する:経営上の立場、請負った工事の業種・期間・金額等
  2. その期間に本人が在籍・常勤していたことを確認する:登記事項証明書、年金記録、雇用保険の資料等

証明したいのが経営経験か技術上の実務経験かで、必要な資料は変わります。また、当時の勤務先が建設業許可を持っていたか、無許可で軽微な工事を行っていたかでも確認方法が異なります。

当時の勤務先が許可業者だった場合

経営経験と技術上の実務経験では、確認資料が同じとは限りません。大阪府では、過去に常勤役員等又は営業所技術者等として証明済みか否かに応じ、過去の許可申請書・変更届、許可通知書、決算変更届等を確認します。特に技術上の実務経験は、勤務先が許可業者だったという事実だけでは足りず、過去の実務経験証明書又は経験期間に相当する工事経歴書等で、対象工事と期間を確認します。

当時の勤務先が無許可業者だった場合

建設業許可を受けていない事業者での経験も、直ちに除外されるわけではありません。工事内容・期間・請負金額は工事請負契約書、注文書・請書、請求書等で、本人の在籍期間は年金記録・雇用保険資料等で確認します。経営経験を証明する場合は、これに加えて経験年数分の税申告書類や役員期間等を確認します。工事名だけで業種を判断できない場合は、見積明細や施工内容が分かる資料も必要です。入金資料は必要に応じて補助資料として整理します。

虚偽の契約書や請求書を後から作ったり、実際に担当していない工事を経験へ加えたりすることはできません。資料が不足する場合は、不足している期間と事実を明確にしたうえで、別の確認方法があるかを申請前に整理します。

前の勤務先から協力を得られない場合は、先に資料の所在を確認します

証明者は原則として当時の使用者です。ただし、法人が解散している場合は、当時の同等以上の役職者が証明できる場合があります。

正当な理由により証明を得られず、やむを得ず自己証明する場合は、その理由を記載し、必要に応じて第三者の証明書その他の資料を添付します。自己証明だけで当然に認められるわけではないため、手元資料と事情を整理し、大阪府へ事前に確認します。事実と異なる書類を作ることはできません。

個人の許可は、法人化すれば自動で会社へ移るわけではありません

個人事業主として建設業許可を受けている方が会社を設立しても、個人名義の許可が当然に法人へ移るわけではありません。事業承継の認可を利用できるか、法人として新規申請をするかを、効力発生日や工事契約の予定から検討します。

建設業法上の事業譲渡等の認可は、事業譲渡等の効力発生日前に、あらかじめ認可を受ける必要があります。効力発生後に遡って認可を受けることはできず、事前認可を利用しない場合は許可の空白期間が生じるおそれがあります。承継法人も許可要件を満たす必要があり、原則として許可に係る建設業の全部の譲渡が前提です。一人親方・個人事業主の建設業許可建設業を見据えた会社設立の流れも参考に、設立前から順番を確認してください。

申請準備で起きやすい手戻り

  • 会社を先に設立し、役員、事業目的、本店、資本金を許可申請前に見直すことになる
  • 前の勤務先へ、証明する要件・業種・期間を伝えず漠然と証明を依頼する
  • 工事名だけで許可業種を決め、実際の施工内容と証明資料が合わない
  • 経験を示す工事期間と、役員・従業員として在籍していた期間がつながらない

設立登記の前に、建設業許可を見据えた会社の事業目的や人員体制を確認すると、設立後の変更を減らせます。

新設会社の申請前チェックリスト

  • 申請する許可業種と一般・特定の区分を確認した
  • 現在の常勤役員等と営業所技術者等を決めた
  • 前職・他社での経営経験と技術上の実務経験を分けた
  • 経験期間、当時の立場、工事内容を裏付ける資料が残っている
  • 開始貸借対照表を作成し、財産要件の確認方法を決めた
  • 残高証明書を使う場合の残高日と申請予定日を確認した
  • 営業所の使用権限・設備・写真を準備できる
  • 健康保険・厚生年金保険・雇用保険の適用関係を整理した
  • 法人化前の許可がある場合は、承継又は新規申請の順序を確認した

現在の状況を3つの質問で整理したい方は、建設業許可 要件かんたん確認もご利用ください。診断結果だけで許可の可否を確定するものではありません。

まとめ:設立時に、現在の体制と過去経験の証明を一緒に組み立てます

新設会社や最初の決算前であっても、建設業許可の申請は検討できます。重要なのは、会社の営業年数ではなく、申請時点の許可要件と、それを示す客観的な資料です。

当事務所では、現在の役員・営業所・技術者、開始貸借対照表や残高証明書、前職・他社での経験資料を分けて確認し、申請までの順番を整理します。許可取得を保証するものではありませんが、設立後に証明資料の不足へ気づくことがないよう、会社設立前又は受注予定が決まる前のご相談にも対応します。

最新情報の確認先

本記事は2026年9月12日時点で、次の一次情報を確認して作成しています。法令、手引き、必要書類、窓口運用は変更されることがあるため、実際の申請時点でも最新版をご確認ください。

よくある質問

最初の決算を迎えていない新設会社でも建設業許可を申請できますか。

決算を迎えていないことだけで申請できないとは限りません。大阪府への一般建設業の新規申請では、開始貸借対照表等で設立時の財産状況を確認します。申請区分、現在の人員体制、営業所、社会保険等を含むすべての要件と証明資料を個別に確認する必要があります。

資本金を500万円にすれば、一般建設業の財産要件を必ず満たしますか。

大阪府では、第1期の決算期が未到来の新設法人について、法人成立日現在の資本金額が500万円以上であることを開始貸借対照表で確認します。この取扱いは、倒産することが明白である場合を除きます。また、ほかの許可要件を満たすことまで意味せず、第1期の決算を終えて確定申告期限を経過した後は、原則として直前期の財務諸表における純資産合計額で確認します。資本金が500万円未満でも、500万円以上の預金残高証明書により資金調達能力を示す方法があります。

代表者が前の会社で積んだ経営経験や実務経験を使えますか。

前職・他社での経験も、経験の内容、期間、立場、申請業種との対応関係を客観的な資料で確認できれば、要件の検討対象になります。ただし、経営経験と技術上の実務経験は別の要件であり、それぞれについて現在の役割と証明資料を確認します。

前の勤務先が建設業許可を持っていなかった場合も経験を証明できますか。

無許可業者での経験が直ちに除外されるわけではありません。工事内容・期間・請負金額は契約書、注文書・請書、請求書等で、在籍期間は年金記録や雇用保険資料等で確認します。経営経験では税申告書類や役員期間等も確認します。許可業者での経験とは確認資料が異なるため、残っている資料を先に整理します。

前の勤務先から証明への協力を得られない場合はどうなりますか。

協力を得られない場合に必ず使える代替資料があるとは限りません。国土交通省のガイドラインには、正当な理由があり証明を得られない場合の自己証明等の取扱いがありますが、自己証明だけで当然に認められるものではありません。手元資料と事情を整理し、大阪府へ個別に確認します。事実と異なる書類を作ることはできません。

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