「一人で事業をしているけれど、会社にできるのか」「ほかに役員や出資者を探さなければならないのか」と迷う方は少なくありません。結論からいえば、株式会社も合同会社も一人で設立できます。ただし、会社を作ると、個人事業とは異なる管理や届出が継続して必要になります。

一人会社とは何か

「一人会社」という名称の会社形態が会社法に定められているわけではありません。一般には、株主・取締役等が一人の株式会社や、出資者が一人の合同会社を指します。

一人が出資し、経営判断を行う場合でも、設立登記後の会社と代表者個人は別の主体です。会社名義で得た売上を個人のお金と同じように扱ったり、個人の支出を理由なく会社経費にしたりすることはできません。口座、契約、帳簿、領収書、資産を分けて管理することが、一人会社でも必要です。

株式会社と合同会社はいずれも一人で設立できる

一人で株式会社を設立する場合

小規模で取締役会を設置しない株式会社では、一人が発起人として全株式を引き受け、設立時取締役になり、設立後の株主と取締役を兼ねる形を選べます。法務省も「一人株式会社」の設立登記手続を案内しています。

ただし、株式会社ならどのような機関設計でも取締役一人で足りるわけではありません。取締役会設置会社では取締役が3人以上必要です。この記事では、一人で始める取締役会非設置会社を基本例として説明しています。

一人で合同会社を設立する場合

合同会社も、一人が出資して設立できます。合同会社でいう「社員」は従業員ではなく、会社へ出資し、原則として経営に参加する構成員のことです。一人の社員が業務執行社員・代表社員となる設計ができます。

株式会社の設立時定款は公証人の認証が必要ですが、合同会社の定款には公証人による認証がありません。一方で、どちらも定款の作成、出資の履行、設立登記は必要です。定款の役割は定款作成と認証の基本で詳しく説明しています。

一人会社を設立する流れ

一般的には、次の順番で進めます。

  1. 基本事項を決める:株式会社・合同会社の選択、商号、本店、事業目的、資本金、役員・社員、決算期等を整理します。
  2. 許認可の予定を確認する:開業後に必要な許可や届出があれば、目的、営業所、資金、人的要件との関係を先に確認します。
  3. 定款を作成する:株式会社は公証人による定款認証も行います。合同会社は定款認証が不要です。
  4. 出資を履行する:会社形態に応じた方法で金銭等を払い込み、その事実を示す資料を整えます。
  5. 設立登記を申請する:会社を代表すべき方が申請するか、司法書士へ依頼します。会社は本店所在地で設立登記をすることによって成立します。
  6. 設立後の手続を行う:税務、社会保険・労働保険、口座、許認可等を、事業の状況に応じて進めます。

必要書類や株式会社・合同会社ごとの違いは、会社設立の流れで順番に確認できます。

株式会社と合同会社のどちらを選ぶか

一人で始める場合も、費用だけで会社形態を決めないことが大切です。

確認する点 株式会社 合同会社
設立時の定款認証 必要 不要
経営する人の基本的な呼称 取締役 業務執行社員
出資者の位置付け 株主 社員(従業員の意味ではありません)
将来の計画 株式発行や役員構成も検討 持分や社員の加入・退社方法も検討

取引先へ会社の仕組みを説明しやすいか、将来ほかの人から出資を受けるか、共同経営者を迎えるか、事業を誰へ引き継ぐかによって判断は変わります。公的費用の違いは合同会社と株式会社の設立費用で分けて説明しています。

一人会社のメリット

意思決定と方針をまとめやすい

ほかの株主や共同経営者との調整が少ないため、営業方針、設備投資、サービス内容などを決めやすい点は、一人会社の特徴です。自分の専門性や顧客との関係を軸に、小さく始める事業にも合うことがあります。

法人として契約や事業を整理できる

設立後は、会社名義で契約し、売上や経費、資産を法人のものとして管理できます。取引先の方針により法人との契約が求められる場合もあります。ただし、法人にすれば融資や取引が必ず有利になるわけではありません。決算や資金繰り、事業の実態も確認されます。

一人会社で特に注意したいこと

判断・実務・確認が一人に集中する

経営判断だけでなく、営業、請求、支払、記帳、契約管理まで一人に集まりやすく、誤りを見つける別の目も少なくなります。支払予定、申告・届出期限、契約の更新日を一覧にし、定期的に外部専門家へ確認する範囲を決めておくと管理しやすくなります。

代表者が動けない場合の備えが必要

病気、事故、長期不在等で代表者が対応できないと、取引先への連絡、支払、電子申請、許認可の手続が止まるおそれがあります。会社口座、印章、電子証明書、重要契約、各種IDを安全に管理し、緊急時にどこへ連絡し、どの情報を誰が確認できるようにするかを平常時に整理します。

将来、従業員や共同経営者を迎える可能性があるなら、権限、株式・持分、重要情報の引継ぎも設立時の定款や社内ルールと合わせて考えます。

社長一人でも社会保険を確認する

日本年金機構は、株式会社などの法人事業所を、事業主のみの場合を含めて厚生年金保険の適用事業所として案内しています。「従業員がいないから関係ない」とは考えず、健康保険・厚生年金保険の新規適用と代表者の被保険者資格を確認します。代表者が無報酬の場合等は個別事情が関係するため、年金事務所または社会保険労務士へ確認してください。

税務申告や役員報酬を含む税務判断は税理士、社会保険・労務の手続は社会保険労務士の担当領域です。

資本金を形式的な最低額だけで決めない

株式会社は法律上、資本金1円でも設立できます。しかし、設立時に必要な公的費用、仕入れ、家賃、広告、設備等の運転資金は別に必要です。取引条件、融資審査、許認可の財産要件にも、会社を設立できる最低額とは別の基準があります。

「設立できる金額」ではなく、売上が入るまでの支出と不測の費用を見積もって決めます。当事務所報酬と公的費用の考え方は料金案内をご確認ください。

個人事業のまま進めるか、法人化するか

取引先が法人契約を求めている、複数年かけて事業を育てたい、従業員の採用や共同経営を予定している場合は、会社設立を検討する理由になります。一方、事業を試す段階で固定的な事務負担を抑えたい場合は、個人事業のまま進める選択もあります。

法人化による税務上の有利・不利は、利益、役員報酬、家族構成、ほかの所得、将来計画等で変わります。「会社にすれば必ず節税できる」とは限らないため、税額の試算や申告方法は税理士へ相談してください。

建設業・古物商等の許認可を予定する場合

一人会社であることだけを理由に、建設業許可や古物商許可を取得できないわけではありません。しかし、会社設立によって個別の許可要件が省略されるものでもありません。

建設業では、営業所、常勤役員等、営業所技術者等、財産的基礎、社会保険等を確認します。設立前に大阪の建設業許可申請建設業許可を見据えた事業目的を確認しておくと、定款と申請準備を分けずに整理できます。

法人で中古品の買取り・販売を予定する場合は、役員、営業所、管理者、事業目的等を確認します。古物商許可サービス古物商を見据えた事業目的もあわせてご覧ください。

行政書士・司法書士・税理士・社会保険労務士の役割

担当 主な範囲
行政書士 会社の基本事項の整理、定款作成、電子定款、許認可を見据えた事業目的、設立後の許認可申請
司法書士 設立登記・変更登記の申請代理
税理士 税務相談、届出、記帳・決算・申告等
社会保険労務士 社会保険・労働保険、労務に関する手続等

設立登記は会社を代表すべき方が自ら申請することもできます。当事務所は設立登記を代理しません。専門家へ依頼する場合は、それぞれ別契約・別費用です。案件に応じて必要な担当者や確認先を整理しますが、専門家の紹介をお約束するものではありません。

当事務所へ相談できること

会社設立支援では、希望する会社形態、商号、本店、事業内容、資本金、役員・社員、決算期、設立時期を確認し、定款と許認可を見据えた事業目的を整理します。

一人で決める事項が多いからこそ、設立できるかだけでなく、設立後に管理を続けられる形か、必要な許認可まで順番がつながっているかを確認することが大切です。決まっている範囲からお問い合わせください

まとめ:一人で作れることと、無理なく続けられることを分けて考える

株式会社・合同会社は一人で設立できます。ただし、会社と個人の資産・契約を分けること、社会保険や税務の手続、代表者が動けない場合の備え、許認可の要件など、設立後に続く管理もあります。

会社形態や資本金を決める前に、今の事業、数年後の計画、許認可、必要な専門家を整理し、自分に合う形を選びましょう。

最新情報の確認先

本記事は2026年9月11日時点で、次の一次情報を確認して作成しています。会社法、登記様式、手数料、社会保険の取扱い等は変わる可能性があるため、設立時に最新版をご確認ください。

よくある質問

一人だけで株式会社を設立できますか。

はい。取締役会を設置しない小規模な株式会社では、発起人・株主・取締役を一人が兼ねる形で設立できます。ただし、取締役会を置く場合などは必要な機関構成が異なるため、予定する会社設計に合わせて確認します。

一人会社では株式会社と合同会社のどちらが向いていますか。

公証人による定款認証の有無や設立費用だけでなく、意思決定の方法、対外的な説明のしやすさ、将来の出資者や共同経営者、事業承継の予定によって変わります。現在の事業と数年後の計画を整理して選ぶことが大切です。

資本金1円でも会社を設立できますか。

株式会社は資本金1円でも設立でき、合同会社にも法定の最低資本金額はありません。ただし、設立費用や当面の運転資金、取引条件、融資、許認可で確認される財産要件とは別の問題です。必要な支出と事業計画から現実的な金額を検討してください。

社長一人の会社でも社会保険への加入が必要ですか。

法人事業所は、事業主のみの場合を含めて健康保険・厚生年金保険の適用事業所となります。実際に誰が被保険者になるか、代表者が無報酬の場合などの個別判断は状況により異なるため、年金事務所または社会保険労務士へ確認してください。

設立登記を行政書士へ依頼できますか。

設立登記は会社を代表すべき方が申請するか、司法書士へ依頼します。当事務所は登記申請を代理せず、会社の基本事項、定款、電子定款、許認可を見据えた事業目的などを整理します。専門家へ依頼する場合は別契約・別費用です。

関連ページ

  • 会社設立支援 — 定款、電子定款、許認可を見据えた事業目的と当事務所の支援範囲をご案内します。
  • 会社設立の流れ — 基本事項の整理から登記、設立後の手続までを順番に解説します。
  • 定款作成と認証の基本 — 株式会社・合同会社の定款の違いを確認できます。
  • 合同会社と株式会社の設立費用 — 公的費用と専門家報酬を分けて比較しています。
  • 料金案内 — 当事務所の会社設立支援の基本報酬と別途費用をご案内します。
  • お問い合わせ — 一人での会社設立と許認可について、決まっている範囲からご相談いただけます。

一人で始める会社の設計を、許認可も含めて整理します。

会社形態、資本金、事業目的、設立後の管理、予定する許認可を確認し、定款作成までの順番をご案内します。設立登記、税務、社会保険・労務は担当領域を分けて進めます。

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