特定技能外国人は転職できるのか
特定技能外国人が転職すること自体は禁止されていません。ただし、一般的な転職と同じように、退職して新しい会社と雇用契約を結べば直ちに働けるわけではありません。
出入国在留管理庁は、在留資格「特定技能」の方が所属機関を変更する場合、在留資格変更許可申請が必要と案内しています。在留カードに記載された在留資格名が転職前後とも「特定技能」であっても、届出だけで勤務先を変更できるという意味ではありません。
変更申請では、外国人本人の在留状況や技能要件だけでなく、新しい所属機関との雇用契約、受入れ機関としての基準、特定産業分野ごとの要件、1号特定技能の場合の支援計画なども確認されます。そのため、転職の可能性と、個別の変更申請が許可されるかは分けて考える必要があります。
許可前に新しい職場で働き始めない
新しい所属機関で特定技能として就労を始めるのは、原則として、その所属機関を前提とする在留資格変更許可を受けた後です。出入国在留管理庁の受入れ手順でも、在留資格変更許可の後に就労開始という順序が示されています。
「申請を出したから働ける」「同じ分野だから先に研修を始めてもよい」と自己判断しないでください。申請中に旧所属機関で働けるか、退職後の求職・待機期間をどのように扱うか、個別の事情に応じた手続きがあるかは状況により異なります。就労開始日を確定する前に、地方出入国在留管理官署へ確認することが安全です。
在留資格変更許可申請と届出は別の手続き
転職時には「申請」と「届出」という言葉が複数出てきます。両者は提出する人も目的も異なり、どれか一つを行えば他が不要になるものではありません。
| 手続き | 主な提出主体 | 確認する内容 |
|---|---|---|
| 在留資格変更許可申請 | 外国人本人 | 新しい所属機関で特定技能の活動を行うための申請。雇用条件、本人・所属機関・分野の要件等を確認します。 |
| 所属(契約)機関に関する届出 | 外国人本人 | 契約終了や新たな契約の締結等があった場合は、原則として事由が生じた日から14日以内です。変更許可との時系列により届出不要となる扱いもあるため、実際の日付関係から要否を確認します。 |
| 特定技能雇用契約等の随時届出 | 特定技能所属機関 | 雇用契約の変更・終了等に応じた届出を確認します。受入れ困難、支援計画、支援委託契約等について別の届出が必要になる場合もあります。 |
旧所属機関では、特定技能雇用契約の終了に関する届出を確認し、退職理由等によっては受入れ困難に関する届出も確認します。別会社への転職では、新しい所属機関を前提とする在留資格変更許可申請を行い、変更許可の際に新所属機関が別途「新たな雇用契約の締結」の届出をする扱いではないと、出入国在留管理庁のQ&Aで案内されています。その後に契約や支援内容が変わった場合などは、事実に応じて必要な届出を確認します。
登録支援機関へ1号特定技能外国人支援の全部を委託する場合も、受入れ企業自身の制度上の責任がなくなるわけではありません。特定技能所属機関が行う随時届出は、届出主体である所属機関が管理します。
転職手続きの全体像
次は一般的な確認順序です。退職日、内定日、申請日の前後関係は現在の雇用契約や在留期限などにより変わるため、すべての方にそのまま当てはまる固定日程ではありません。
| 段階 | 本人が確認すること | 企業が確認すること |
|---|---|---|
| 1. 内定・退職時期の調整 | 在留期限、現在の契約、希望する業務を確認します。 | 業務区分、雇用条件、受入れ可能な時期を確認します。 |
| 2. 要件・必要書類の確認 | 技能試験等の証明、在留カード、これまでの活動資料等を準備します。 | 受入れ基準、分野固有要件、支援計画、会社資料等を整理します。 |
| 3. 在留資格変更許可申請 | 新しい所属機関での活動を前提に申請します。 | 所属機関作成用書類や裏付け資料を準備します。 |
| 4. 審査・許可 | 追加資料の連絡を確認し、許可後に新しい在留カード等を受け取ります。 | 入社日を先に確定しすぎず、審査状況を踏まえて調整します。 |
| 5. 就労開始 | 許可された内容に沿って新しい職場で働き始めます。 | 雇用条件どおりに受け入れ、1号では支援計画を実施します。 |
| 6. 届出の確認 | 退職、新契約、変更許可の日付関係から、本人の届出の要否と期限を確認します。 | 契約、支援、受入れ状況に応じた所属機関の届出を確認します。 |
審査に必要な期間は申請時期、申請内容、追加資料の有無等によって変わります。転職日や就労開始日から逆算して固定日数を当てはめるのではなく、出入国在留管理庁が公表する最新の処理期間と個別状況を確認し、余裕をもって準備してください。
新しい受入れ企業が準備すること
新しい企業は、求人と雇用契約を用意するだけでなく、自社が特定技能外国人を受け入れる基準を満たすかを確認します。主な確認事項は次のとおりです。
- 外国人が従事する仕事が、対象となる特定産業分野・業務区分に該当するか
- 特定技能雇用契約の報酬や労働条件が基準に適合しているか
- 税、社会保険、労働関係法令の遵守状況に問題がないか
- 分野別の協議会加入、受入計画の認定、上乗せ基準等が必要か
- 1号特定技能の場合、支援計画と支援実施体制を整えられるか
- 登録支援機関へ委託する場合、委託範囲と自社の担当を区別できているか
- 雇用契約や支援内容の変更、受入れ開始後に必要となる届出を管理できるか
特定産業分野ごとに所管省庁の手続きや提出資料が異なることがあります。古い一覧や前職で使った書類をそのまま流用せず、転職先の事業内容と業務区分について、申請時点の分野別運用要領を確認します。
社会保険の適用・労務管理・税務の具体的な判断は、それぞれ社会保険労務士、税理士、弁護士等の業務範囲になる場合があります。在留手続きと分けて、必要な専門家や行政機関へ確認してください。
外国人本人が確認すること
本人は、新しい仕事の内容だけでなく、現在の在留状況とこれまでの手続きも整理します。
- 在留カードの在留期限と、現在の所属機関・指定内容
- 旧所属機関の退職日、雇用契約の終了日と退職を示す資料
- 新しい所属機関との雇用契約、就業場所、業務内容、報酬
- 新しい分野・業務区分に対応する試験合格等の資料
- これまでに行った在留申請や所属機関に関する届出
- 申請中・退職後の生活費、住居、支援について確認すべき事項
必要書類は、本人の経歴、所属機関、特定産業分野、過去に提出した資料、オンライン申請の利用等によって変わります。上記は完全な共通リストではありません。特定技能関係の申請・届出様式一覧にある最新の提出書類一覧・確認表を、個別の申請内容に合わせて確認してください。
同じ分野と別の分野へ転職する場合の違い
同じ特定産業分野・同じ業務区分へ転職する場合でも、所属機関が変わる以上、在留資格変更許可申請が不要になるわけではありません。新しい所属機関の受入れ基準、雇用条件、支援体制等を改めて確認します。
別の特定産業分野や別の業務区分へ移る場合は、転職先で求められる技能水準と日本語能力を満たすかを確認します。新しい区分に対応する技能試験等が必要になる場合もあれば、技能実習2号等の良好な修了により試験免除を確認できる場合もあります。現在持っている証明だけで足りると決めつけず、分野別運用要領と試験区分の対応を確認します。
また、専門的な設計・通訳等を主な仕事とする技術・人文知識・国際業務や、事業の経営・管理を行う経営・管理は、特定技能とは対象となる活動と要件が異なります。職種名だけで在留資格を選ばず、実際に担当する仕事から整理してください。
よくあるトラブルと予防策
届出をすれば新しい会社で働けると思っていた
本人の所属機関に関する届出や、旧所属機関による契約終了の届出は、在留資格変更許可申請の代わりにはなりません。内定時に必要な手続きを洗い出し、変更許可後の就労開始を前提に予定を組みます。
入社日を先に決め、許可前の就労を求めてしまった
審査期間は一律ではありません。「申請中」というだけで新しい所属機関で働かせないよう、採用担当者、現場担当者、本人の間で就労開始条件を共有します。
前職と同じ業界なので、要件確認を省略した
同じ業界でも、特定産業分野や業務区分が同じとは限りません。会社の主な事業ではなく、本人が実際に従事する業務と、分野別の要件を照合します。
退職後に届出や在留期限の確認が遅れた
本人の所属(契約)機関に関する届出は、契約終了や新たな契約の締結等の事由が生じた場合、原則として14日以内と案内されています。一方、転職と同時に在留資格変更許可を受けた場合など、届出不要とされる扱いもあります。所属機関側にも別の届出があるため、退職日・契約日・変更許可日・在留期限を一覧にし、誰が何を提出するかを分けて管理します。
公式情報
本記事は2026年9月9日時点で、次の出入国在留管理庁の一次情報を確認して作成しています。制度、様式、特定産業分野、業務区分、必要資料、オンライン申請の運用は変更されることがあるため、実際の申請・届出時には各公式ページから最新版をご確認ください。
- 在留資格「特定技能」
- 特定技能関係の申請・届出様式一覧
- 受入れ機関の方(就労開始までの流れ)
- 特定技能外国人受入れに関する運用要領
- 特定技能制度に係る基本方針・分野別運用方針・運用要領
- 特定技能制度における各種届出の記載方法・Q&A
- 特定技能所属機関・登録支援機関による届出
- 特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出
- 所属(契約)機関に関する届出
- 所属機関等に関する届出Q&A
- 在留資格変更許可申請
- 在留審査処理期間
転職前に手続きの順番を整理します
特定技能外国人の受入れ手続きでは、対象分野、本人の要件、雇用条件、支援体制、在留申請、受入れ後の届出まで順に確認します。在留資格・外国人雇用の総合案内もあわせてご覧ください。
当事務所では、新たに受け入れる企業と外国人本人の状況を伺い、必要な在留手続き、提出資料、関係する届出を整理します。許可を保証するものではありませんが、「退職日や入社日をどう組めばよいか」「同じ分野に当たるか分からない」という段階から確認できます。
特定技能の転職手続きを相談する
初回フォームには、旅券番号、在留カード番号、証明書画像その他の機密情報を送らず、現在の在留資格、分野、転職予定時期の概要をお知らせください。
よくある質問
特定技能外国人は転職できますか。
転職することは可能ですが、雇用契約を結ぶだけでは新しい所属機関で働き始められません。新しい所属機関での活動を前提とする在留資格変更許可申請を行い、本人と所属機関に必要な届出も確認します。本人の要件、新しい所属機関の基準、分野固有の要件を満たすかは個別に審査されます。
同じ特定産業分野への転職でも在留資格変更許可申請が必要ですか。
必要です。出入国在留管理庁は、在留資格「特定技能」の方が所属機関を変更する場合、在留資格変更許可申請が必要と案内しています。同じ分野・業務区分であっても、所属機関に関する届出だけで手続きが完了するわけではありません。
在留資格変更許可申請中に新しい会社で働けますか。
新しい所属機関で特定技能として働くのは、原則として、その所属機関を前提とする在留資格変更許可を受けた後です。申請中の旧所属機関での就労、退職後の活動や生活、個別の例外的な取扱いは事情により異なるため、就労を始める前に地方出入国在留管理官署へ確認してください。
別の特定産業分野へ転職する場合、試験を受け直す必要がありますか。
一律に受験し直すとは限りませんが、転職先の分野・業務区分に対応する技能水準や日本語能力を満たす必要があります。技能試験・日本語試験の合格、技能実習修了による免除の可否、分野固有の要件を、申請時点の運用要領に照らして確認します。



