どの要件の「10年」かを先に確認します
この記事で扱うのは、一般建設業許可の営業所技術者について、申請する業種に関する10年以上の実務経験を使うルートです。建設業法第7条第2号ロに定められています。現在は、一般建設業の「営業所技術者」と特定建設業の「特定営業所技術者」を総称して「営業所技術者等」と呼びます。旧称は「専任技術者」です。
経営体制を担う常勤役員等の経営経験とは、確認する職務も年数も異なります。また、一般建設業の10年の経験だけで、特定建設業の技術者要件まで満たすわけではありません。
「建設会社に在籍していた10年」を、そのまま対象業種の実務経験にすることもできません。大阪府の手引きでは、施工に関する技術上の職務経験を対象とし、単なる雑務だけの経験は含めないとしています。一方、設計、現場監督、土工やその見習い等の経験も含まれます。実際に担当した仕事の内容から確認します。
制度全体は営業所技術者等の役割・資格・実務経験で解説しています。本記事は、古い工事資料が足りない場合の準備に絞ります。
古い資料がないときは、「何が確認できないか」を分けます
長く働いている方でも、移転や保管場所の変更、担当者の退職などにより、過去の資料を探すのに時間がかかることがあります。資料不足には、主に次のような違いがあります。
- 工事の契約書・注文書がなく、請求書や入金記録だけが残っている
- 前の勤務先が廃業している、または資料提供への協力を得にくい
- 書類に「一式」などとしか記載されず、具体的な施工内容や許可業種が分からない
- 会社の工事実績は分かるが、本人がその期間に在籍・従事していた裏付けが足りない
- 最初と最後の資料はあるが、途中の工事実績を確認できない
資料が見つからないことは、実際の経験が存在しなかったことを意味しません。ただし、裏付けができなければ、その期間を申請上の経験として認めてもらえない可能性が高くなります。足りないのが「工事内容」「期間」「本人との関係」のどれかを分けると、探す資料が絞れます。
税務上の保存期間と、許可申請の立証期間は別です
国税庁の法人の帳簿書類等の保存期間は、原則として、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間です。一方、青色繰越欠損金等が生じた事業年度には10年間となる場合があり、平成30年4月1日前に開始した事業年度については9年間とされています。
これは法人税の説明で、法人・個人、書類の種類、事業年度等によって確認すべき保存義務は異なります。保存義務の期間を過ぎても実物が残っている場合はありますし、税務上の保存期間が終わったから、建設業許可で必要な経験の証明期間も短くなるわけではありません。 許可申請に使う資料は、税務の保存義務とは別に保管の必要性を検討してください。
大阪府の確認は「工事の実績」と「本人の在籍」の二本柱です
大阪府手引き第2章の2-24〜2-26頁では、実務経験証明書(様式第9号)の記載内容を、工事実績と在籍を確認する資料で裏付けます。経営経験の証明書とは様式が異なります。
1.対象業種の工事内容と期間が分かる資料
工事実績の資料を使う場合は、証明する会社または個人事業主での工事について、工期・工事名・工事内容・請負金額を確認します。手引きは、申請業種についての契約書・注文書・請求書・内訳書等を挙げています。
請求書も確認資料の候補ですが、日付と金額だけでは、いつ、どの業種の工事をしたのか分からないことがあります。見積内訳、工期が分かる記録、対応する入金資料などを整理し、必要な組合せを申請先へ確認します。「請求書+通帳なら必ず認められる」という一律の扱いではありません。
工事名だけで建設工事への該当性や許可業種を決めず、実際の施工内容まで対応させることが大切です。
2.その期間に本人が在籍していたことを示す資料
大阪府手引きでは、年金の被保険者記録照会回答票、継続雇用の場合の雇用保険被保険者証、離職している場合の雇用保険被保険者離職票等が示されています。証明者が個人事業主の場合は、本人の氏名等が記載された給与関係書類と所得税申告書など、立場に応じた資料を確認します。
ただし、証明者と申請者が同一の場合や、過去に建設業者から証明を受けている者については、手引きに在籍確認書類を原則不要とする扱いもあります。すべての方に同じ資料を一式求めるものではありません。適用条件や証明者の印鑑証明書等を含む必要書類は、同手引きで確認してください。
なお、年金記録等で在籍が分かることと、その人が対象業種の技術上の職務に従事したことは同じではありません。様式第9号の経験内容と、工事資料・在籍期間をつなげて整理します。
過去の在籍と、現在の常勤性・専任性も別に確認します
過去の経験を立証できても、申請時点でその営業所に常勤し、専ら職務に従事できるかは別の確認です。現在の勤務・給与・社会保険等の資料、他社や他営業所での役割も点検します。現在の常勤性の資料は、大阪府手引きの2-36〜2-37頁が確認先です。
全月の書類ではなく、代表工事と期間のつながりを点検します
大阪府では、様式第9号に各年の代表的な工事を記載し、記載した代表工事はすべて資料で確認します。「10年分だから全月・全工事の契約書が一律に必要」とする説明は正確ではありません。
同手引きは、各年の代表工事と翌年の代表工事との間隔が1年以上とならないようにし、1年以上の間隔があれば、その間に積み上げた対象業種の他の工事実績を確認するとしています。
そのため、書類の枚数を数えるより、工期順に並べて空白を見つけることが先です。資料上の空白があるときも、その間の別の工事資料を探し、どの期間を確認できるかを整理します。空白が一つあるだけで、それまでの全経験が直ちに無効になるという意味ではありません。
実務経験は、具体的に建設工事へ携わった期間を積み上げて合計する考え方です。同じ会社で連続10年働いたことだけが条件ではなく、転職した場合も、勤務先ごとの経験と証明資料を対応させます。
契約書・注文書が足りない場合の確認順序
1.保存先を棚卸しする
事務所・倉庫の紙ファイル、当時のパソコン、共有フォルダ、電子契約サービス、受発注メールなどを確認します。経理担当者や税理士等に預けた控えがあるかも照会します。ただし、相手方に工事資料が必ず残っているとは限りません。
2.元勤務先・発注者等へ、業種と期間を伝えて探す
漠然と「10年分の書類がほしい」と依頼するのではなく、必要な業種、工事名、工期、担当していた時期を整理します。発注者側に控えがあっても、本人の経験証明を誰が行うかは別問題です。資料の提供と証明への協力を分けて確認します。
3.過去の許可申請書類を使えるか調べる
大阪府手引きでは、過去に実務経験で営業所技術者等として証明済みの方は、受付印のある許可申請書の表紙と様式第9号などで確認する方法があります。変更届の場合も、表紙や完了通知はがき等と様式第9号の組合せが示されています。
本人が未証明でも、許可業者での経験について、所定の期間関係を満たす過去の様式第9号や、証明期間に相当する工事経歴書(様式第2号)を含む決算変更届等を使う方法があります。勤務先の許可通知書があるだけで、本人の対象業種の10年がすべて証明できるわけではありません。 業種・期間・受付の確認資料が条件に合うかを点検します。
4.不足期間を示して申請先へ相談する
年表に「資料あり」「追加確認」「資料なし」を区別して記入します。元勤務先が廃業している、証明を得られない等の事情があれば、その理由と保有資料を具体的に伝えてください。どの代替・補足資料が使えるか、誰による証明が必要かは個別確認となります。
実際と異なる契約書を作ったり、担当していない工事を経験へ加えたりすることはできません。前職の経験を新会社の申請へ使う場合は、新設会社の経験証明も参考に、申請会社と過去の勤務先を分けて整理します。
10年以外のルートを、書類集めの前に比較します
一般建設業では、次のような資格・学歴等のルートがあります。いずれも申請する業種に対応していることが前提です。スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
| 確認するルート | 経験年数の目安・起算点 | 業種・適用条件の確認 |
|---|---|---|
| 国家資格等 | 資格のみで満たすものと、追加の実務経験を要するものがある | 資格名・級・種別・取得時期と許可業種の対応を有資格コード表で照合 |
| 指定学科を卒業 | 大学・短大・高専は卒業後3年以上、高校等は卒業後5年以上 | 対象業種の指定学科を修めていること。専修学校専門課程は指定学科に加え、専門士等の称号の有無により3年・5年を確認 |
| 対応する1級第一次検定合格 | 合格後3年以上 | 対応種目に限る。指定建設業7業種と電気通信工事業はこのルートの対象外 |
| 対応する2級第一次検定合格 | 合格後5年以上 | 対応種目に限る。対象外業種は1級と同じ |
| 対象業種の実務経験 | 10年以上 | 工事内容・経験期間・在籍等を確認。他法令の施工資格や期間の重複にも注意 |
根拠は国土交通省「許可の要件」、技術者資格要件の見直し資料、大阪府手引きの2-19頁等です。表は主なルートの整理で、登録基幹技能者や大臣認定等を含むすべての資格区分を網羅するものではありません。
第一次検定によるルートでは、土木・造園施工管理は土木工学、建築施工管理は建築学、電気工事施工管理は電気工学、管工事施工管理は機械工学に対応する扱いです。その学科が申請業種の指定学科に対応するかも確認します。
ここで対象外となる指定建設業は、土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の7業種です。「電気工事施工管理の第一次検定に合格したから、電気工事業にもこの3年・5年のルートが使える」とは限りません。第二次検定まで合格している方は、資格自体によるルートも含めて照合します。
また、今から第一次検定に合格しても、合格前の経験を「合格後3年・5年」に振り替えることはできません。 すでに持っている資格、合格日、卒業時期を先に確認することが、準備の見通しにつながります。
複数業種と、他法令の資格が必要な工事は個別に確認します
複数業種を実務経験で証明する場合は、原則として同じ経験期間を二重に数えません。ただし、資格を併用する場合や、複数業種の実務経験に関する認定、解体工事の制度移行に伴う取扱い等もあるため、「2業種なら必ず20年」とも一律にはいえません。業種ごとに、適用するルートと使う期間を整理します。
電気工事・消防施設工事では、電気工事士法・消防法等により、一定の工事への直接従事に免状等が必要です。資格を取る前の仕事をすべて一律に除外するのではなく、当時の工事・職務の内容、資格の要否と取得時期を確認します。解体工事にも、建設業許可や解体工事業登録と経験の算入に関する取扱いがあります。大阪府手引きの2-21〜2-25頁を参照し、不明な期間は申請先へ相談してください。
申請前に作る資料チェックリスト
- 申請する業種と一般・特定の区分を確定した
- 保有資格、合格日、指定学科・卒業日から別ルートを確認した
- 勤務先ごとに工事名・具体的内容・着工と完成の時期を並べた
- 注文書・契約書・請求書・内訳書を工事ごとに対応させた
- 入金記録など、内容を補足できる資料の所在を確認した
- 雇用・在籍期間の資料と、本人が従事した期間を照合した
- 過去の許可申請書・変更届・決算変更届の控えを探した
- 代表工事の間隔、資料の空白、複数業種での期間重複を点検した
- 原本・電子原本の保管先と、必要時に提示できるかを確認した
- 現在の常勤性・専任性を、過去の経験とは別に確認した
公式情報
本記事は2026年9月25日時点で、次の一次情報を確認して作成しています。大阪府の令和8年3月改訂手引きを中心に整理していますが、法令・資格区分・確認資料は変更される場合があります。大阪府以外への申請は、各許可行政庁の最新版を確認してください。
- e-Gov法令検索「建設業法」
- 国土交通省「許可の要件」
- 大阪府「建設業許可の手引き」
- 大阪府「令和8年3月改訂版・第2章」
- 国土交通省「実務経験による技術者資格要件の見直し」
- 国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」
よくある質問
契約書や注文書がなく、請求書しかない場合も証明できますか。
大阪府の手引きは、工事の契約書・注文書・請求書・内訳書等を確認資料として挙げています。ただし、請求書があるだけで必ず足りるわけではありません。工期・工事名・工事内容・請負金額を確認できるかを点検し、必要に応じて入金記録などの補足資料と組み合わせて申請先へ確認します。
前の勤務先が廃業していると、経験は使えませんか。
廃業だけで経験がなくなるわけではありませんが、当時の工事実績、在籍期間、証明者を確認することが難しくなります。手元の控え、元勤務先や発注者が保有する資料、過去の許可申請書類等の所在を調べ、証明を得られない事情と残っている資料を申請先へ相談してください。
同じ会社で10年間連続して働いている必要がありますか。
同じ会社で連続10年という条件ではなく、対象業種の工事に携わった実務経験の期間を積み上げて確認します。勤務先が変わった場合は各期間の資料と証明を整理し、重複期間を二重に数えないようにします。資料に空白がある場合も、確認できる経験期間を個別に整理します。
今から第一次検定に合格すれば、これまでの経験で3年・5年のルートを使えますか。
このルートで数えるのは、対応する検定に合格した後の実務経験です。1級は合格後3年以上、2級は合格後5年以上が基準で、合格前の経験をそのまま充当することはできません。指定建設業と電気通信工事業は対象外で、検定種目と申請業種の対応も確認します。
資格を取れば、古い工事書類はすべて不要になりますか。
申請業種に対応する資格だけで技術上の資格要件を満たす場合もありますが、資格に加えて所定の実務経験が必要な場合もあります。現在の常勤性・専任性や、常勤役員等の別の要件の資料まで不要になるわけではありません。使う資格と申請全体の必要資料を分けて確認します。
まずは「対象業種」と「資料の年表」を整理しましょう
10年の実務経験を使う準備は、書類を大量に集めることからではなく、どの業種の、誰の、どの期間を証明するかを決めることから始まります。別の資格ルートも確認し、残っている資料と不足期間を整理すれば、申請先へ相談すべき点が明確になります。
タケウチ行政書士事務所では、保有資格、前職を含む経験、工事資料の残り方を確認し、建設業許可の準備をお手伝いします。資料だけで申請可否を保証するものではありませんが、必要な確認の順序からご相談いただけます。
実務経験の資料が足りるか、一緒に整理します。
取得したい業種、勤務先と経験期間、保有資格、手元に残っている工事資料を分かる範囲でお知らせください。現在の体制を含む許可全体の要件は、大阪の建設業許可申請支援でもご案内しています。



