特定建設業許可を取れば複数現場を自由に受注できるわけではありません

特定建設業許可は、発注者から直接請け負った工事について、元請として一定額以上の下請契約を締結する場合に必要となる会社側の許可区分です。許可を受けるには、財産的基礎や特定営業所技術者など、特定建設業の要件を満たす必要があります。

これに対し、主任技術者・監理技術者は、個々の工事現場で施工計画、工程管理、品質管理や技術上の指導監督を担う配置技術者です。会社が特定建設業許可を持っていても、工事現場に必要な技術者を配置できなければ、施工体制が整ったことにはなりません。

したがって、受注できるかを判断するときは、少なくとも次の二段階を分けます。

  1. 自社の許可業種と一般・特定の区分で、その工事を請け負えるか
  2. 工事ごとに必要な主任技術者・監理技術者を、工期を通じて配置できるか

特定建設業許可を持つ会社でも、すべての工事に監理技術者を配置するわけではありません。元請か下請か、元請の場合は下請契約総額がいくらか、工事が専任対象かを個別に確認します。一般建設業と特定建設業を含む許可要件の全体像も併せてご確認ください。

まず区別したい3つの金額基準

「4,500万円」「5,000万円」「1億円」は、同じ対象を判定する数字ではありません。2026年9月16日時点の基準は次のとおりです。

論点 現行基準 判定する金額 主な注意点
主任技術者・監理技術者の専任配置 4,500万円以上。建築一式工事は9,000万円以上 当該工事の請負代金額 公共性のある施設・工作物又は多数の者が利用する施設・工作物に関する重要な工事が対象。すべての工事へ金額だけで当てはめない
特定建設業許可・監理技術者 下請契約総額5,000万円以上。建築工事業は8,000万円以上 発注者から直接請け負った元請工事で締結する下請契約の総額 元請契約額そのものではない。元請として下請へ出す総額で判断する
専任特例1号 各工事1億円未満。建築一式工事は2億円未満 兼任しようとする各工事の請負代金額 金額は入口の一条件。現場数、距離、下請次数、連絡員、ICT等の全条件が必要

いずれの金額も消費税を含みます。専任配置の旧基準である4,000万円・8,000万円は、2025年2月1日の改正後の現行値ではありません。

判定する金額に含める項目も同じではありません。専任配置と専任特例1号の請負代金額は、注文者が材料を提供する場合、その市場価格と運送費を加えて確認します。一方、特定建設業許可・監理技術者の下請契約総額には、元請が下請へ提供する材料等の価格を加えません。

4,500万円・9,000万円は「現場専任」の基準です

公共性のある施設・工作物又は多数の者が利用する施設・工作物に関する重要な工事で、請負代金額が4,500万円以上、建築一式工事は9,000万円以上になる場合、配置する主任技術者又は監理技術者は原則としてその工事現場へ専任となります。

対象は公共工事だけではありません。民間工事でも、多数の人が利用する施設などは対象になり得ます。請負契約、工事場所、施設の用途と工事内容を確認し、金額だけで結論を出さないことが重要です。

専任とは、その工事現場の職務へ常時継続的に従事する趣旨です。名義だけを置くことでは足りません。専任で置く監理技術者については、必要な資格に加え、監理技術者資格者証と過去5年以内の監理技術者講習の要件も確認します。

5,000万円・8,000万円は「下請総額」の基準です

発注者から直接工事を請け負った元請が、その工事について総額5,000万円以上、建築工事業では8,000万円以上の下請契約を締結する場合、特定建設業許可が必要となり、現場には主任技術者ではなく監理技術者を配置します。

この判定で見るのは元請工事の契約総額ではなく、その工事で元請が締結する下請契約の総額です。この下請契約額には、元請が提供する材料等の価格を加算しません。自社が下請の立場である場合も同じ基準をそのまま当てはめるわけではありません。500万円未満の工事と建設業許可の基準とは判定場面が異なるため、数字を混同しないようにしてください。

営業所と現場に置く技術者は役割が違います

建設業法上の技術者には、名称が似ていても異なる役割があります。

区分 主な場所・場面 主な役割
特定営業所技術者 特定建設業の許可を受けた営業所 営業所における見積り、入札、請負契約の締結・履行を技術面から支える
主任技術者 建設工事の現場 施工計画、工程・品質管理、技術上の指導監督を行う
監理技術者 元請が一定額以上の下請契約を締結する工事現場 主任技術者の職務に加え、下請業者を含む施工体制全体を総合的に管理する
監理技術者補佐 専任特例2号を利用する各工事現場 専任で配置され、監理技術者の職務を補佐する

営業所に置く技術者がいることと、現場へ配置できる技術者がいることは同じではありません。資格・実務経験が工事業種に対応するか、会社と直接的かつ恒常的な雇用関係があるか、他の営業所や工事を担当していないかなどを確認します。

営業所技術者等の資格・経験と兼務条件は、営業所技術者等の要件で詳しく解説しています。

監理技術者が1人の会社で起きる受注上の制約

監理技術者になれる人が社内に1人でも、要件を満たす現場へ適切に配置する意味はあります。「1人では特定建設業許可を取っても意味がない」ということではありません。

一方、その人を専任で置かなければならない工事が同じ時期に複数重なる場合、原則として現場ごとの技術者が必要です。専任特例を使えなければ、同じ人を複数の専任現場へ名義上配置することはできません。資格者が1人の場合、次の事情が受注判断に直接影響します。

  • 既に配置している現場と、新たに受注する現場の工期が重なる
  • 工期延長により、次の現場の配置予定と重なる
  • 技術者の退職、休職、異動や長期不在が生じる
  • 資格者証・講習の確認や、工事業種に対応する資格の範囲が不足する
  • 現場技術者と営業所の技術者を同じ人に担わせる予定がある

現場技術者の途中交代は、死亡、傷病、退職など一定の事情を踏まえ、慎重かつ必要最小限に行うものです。注文者との合意、交代後の技術者が持つ同等以上の技術力、十分な引継ぎと工事品質の確保などを確認します。「後で交代すればよい」と見込まず、契約前に工程表、既存現場の配置期間、代替要員を確認してください。公共工事では、発注者の入札・契約条件が法令上の最低条件より具体的又は厳格なこともあります。

例外的に1人で2現場を担当できる場合があります

現在は、一定の条件を満たすと、専任が必要な技術者が2現場まで兼任できる主な制度として、専任特例1号と専任特例2号があります。ただし、「近い現場なら兼任できる」「ICTを使えば兼任できる」という一条件だけでは足りません。

専任特例1号

2024年12月13日施行の専任特例1号は、同じ主任技術者又は監理技術者が、次の条件をすべて満たす2現場までを担当できる制度です。

  • 各工事の請負代金額が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)である
  • 兼任する工事現場が2か所以内である
  • 一日の勤務時間内に巡回でき、通常の確実な移動手段で現場間がおおむね片道2時間以内である
  • 当該建設業者から数えた各工事の下請次数が3次以内である
  • 各現場に連絡員を置く
  • 作業員の入退場を遠隔からリアルタイムで確認できる情報通信技術を用いる
  • 人員配置を示す計画書を作成して各工事現場に備え置き、営業所でも所定期間保存する
  • 遠隔から現場状況を確認できる映像・音声通信手段を確保する

土木一式工事又は建築一式工事の連絡員には、その工事と同じ業種について1年以上の実務経験が必要です。連絡員自身に所定の資格や現場への専任・常駐が一律に求められる制度ではありませんが、監理技術者等との連絡を実際に担える配置が必要です。

制度の適用には、工事の種類、施工体制、現場間の実際の移動時間、下請次数、ICTの具体的な機能まで確認します。メールや電話だけでは、作業員の入退場をリアルタイムで確認する要件を満たしません。専任工事と専任を要しない工事を組み合わせる場合も、兼任する現場は合計2か所以内で、適用される各条件を確認します。発注者への説明や契約条件を含め、国土交通省の現行マニュアルと個別案件の条件を照合してください。

専任特例2号

専任特例2号は、監理技術者の職務を補佐する監理技術者補佐を各工事現場へ専任で配置し、同じ監理技術者が2現場までを兼任する制度です。

専任特例1号のような請負代金額の上限はありませんが、監理技術者補佐には資格要件があり、兼任する両方の工事現場へそれぞれ専任で置かなければなりません。監理技術者本人も、巡回、主要会議への参加、主要工程の立会いなどの職務を適正に遂行できる範囲であることが必要です。この制度を主任技術者へそのまま適用することはできません。また、同一の監理技術者について、専任特例1号と専任特例2号を重ねて3現場以上を担当させることはできません。

営業所技術者等との兼務は別に確認します

営業所技術者等には営業所で担う職務があるため、現場技術者との兼務を当然の前提にはできません。建設業法第26条の5の全条件を満たすと、営業所技術者は、その営業所で契約した専任工事1現場の主任技術者を兼ねられる場合があります。特定営業所技術者は、資格等を満たせば、その1現場の主任技術者又は監理技術者を兼ねられる場合があります。

この場合も、請負代金額、営業所と現場の距離、下請次数、連絡員、ICT、人員配置計画、直接的かつ恒常的な雇用関係などを確認します。営業所技術者等と専任現場の兼務特例を利用する同じ人について、工事現場側の専任特例1号又は2号を重ねて利用することはできません。

監理技術者資格者が複数いることは、受注判断の幅につながります

監理技術者資格者が複数いれば、必ず複数の工事を受注できるという意味ではありません。許可業種と工事内容、各人の資格、工事の専任性、雇用関係、発注者の条件を工事ごとに満たす必要があります。

それでも、工事業種に対応する配置可能な人材を複数確保することには、次の実務上の意味があります。

  • 専任が必要な工事の工期が重なった場合に、現場ごとの配置を検討できる
  • 一人の退職、休職、異動や資格上の事情が生じた場合の事業継続に備えられる
  • 工期延長や新たな受注機会に対し、人員配置を再検討しやすい
  • 工事業種ごとの資格対応範囲を広げられる
  • 専任特例に依存しない施工体制を選びやすくなる

人数だけを増やすのではなく、資格の対象業種、実際の雇用・勤務状況、既存現場の配置、将来の受注計画を一覧にすることが重要です。

受注前のチェックリスト

  • 自社は発注者から直接請け負う元請か、下請か
  • 工事内容と自社の許可業種が合っているか
  • 元請の場合、締結予定の下請契約総額はいくらか
  • 当該工事の請負代金額はいくらか(消費税込み)
  • 専任対象となる施設・工作物と工事内容か
  • 主任技術者・監理技術者のどちらを配置する工事か
  • 配置予定者は工事業種に必要な資格・実務経験を満たすか
  • 監理技術者資格者証・監理技術者講習の確認が必要か
  • 他の工事現場や営業所との兼務予定があるか
  • 専任特例を使う場合、適用する制度の全要件を満たすか
  • 工期延長、退職、休職等に備えた代替要員がいるか
  • 発注者の入札・契約条件に追加要件がないか

受注予定の工事を整理するときは、土木一式・建築一式工事と専門工事の考え方も確認してください。営業所が複数ある場合の許可区分は、知事許可で全国の工事を施工できるかで解説しています。

まとめ:許可と配置計画を契約前に一緒に確認します

特定建設業許可は、一定額以上の下請契約を伴う元請工事を請け負うために重要です。しかし、許可取得だけで複数の大規模工事を自由に同時施工できるわけではありません。現場ごとの主任技術者・監理技術者の配置と、専任の要否を別に確認します。

監理技術者になれる人が1人でも、要件を満たす現場へ配置する意味はあります。ただし、専任現場の工期が重なる場合は、原則として現場ごとの配置が必要です。専任特例1号・2号もあるため、人数や金額だけで即断せず、工事の立場、契約額、下請総額、施設用途、工期、資格と兼任条件を並べて判断します。

大阪の建設業許可申請支援では、一般・特定の許可区分と技術者要件を整理しています。建設業支援の全体像と料金・報酬案内もご確認ください。受注予定がある場合は、契約前に建設業許可・技術者配置について相談する際、工事内容、契約関係、金額、工期、下請予定と候補者の資格を分かる範囲でお知らせください。

最新情報の確認先

本記事は2026年9月16日時点で、次の一次情報を確認して作成しています。金額基準、専任特例、資格・講習、入札・契約上の取扱いは変更されることがあるため、実際の受注・配置時点でも最新版をご確認ください。

よくある質問

4,000万円を超える工事では技術者の専任が必要ですか。

4,000万円は現行の専任基準ではありません。2025年2月1日以降、公共性のある施設・工作物又は多数の者が利用する施設・工作物に関する重要な工事では、請負代金額が4,500万円以上、建築一式工事は9,000万円以上の場合に主任技術者又は監理技術者の専任が必要です。金額は消費税を含み、工事の用途や性質も確認します。

特定建設業許可を持っていれば、すべての現場に監理技術者が必要ですか。

いいえ。監理技術者が必要になるのは、発注者から直接工事を請け負った元請が、当該工事について総額5,000万円以上、建築工事業では8,000万円以上の下請契約を締結する場合です。特定建設業許可を持つ会社でも、元請・下請の別や下請契約総額などを工事ごとに確認します。

監理技術者1人で複数の工事現場を担当できますか。

専任を要する工事は現場ごとの配置が原則です。ただし、専任特例1号又は専任特例2号の全要件を満たす場合は、同じ技術者が2現場まで兼任できることがあります。金額、現場間の移動時間、連絡員、ICT環境、監理技術者補佐など、適用する特例ごとの条件を確認します。

4,500万円と5,000万円の基準は何が違いますか。

4,500万円は、一定の重要な工事で主任技術者又は監理技術者を現場に専任で置くかを判断する請負代金額の基準です。5,000万円は、元請が締結する下請契約の総額から、特定建設業許可と監理技術者の必要性を判断する基準です。専任基準の建築一式工事は9,000万円、下請総額基準の建築工事業は8,000万円で、いずれも消費税を含みます。

営業所の技術者が工事現場の監理技術者を兼ねられますか。

一定の条件をすべて満たす場合、営業所技術者は、その営業所で契約した専任工事1現場の主任技術者を兼ねられることがあります。特定営業所技術者は、資格等を満たせば主任技術者又は監理技術者を兼ねられる場合があります。現場数、距離、連絡体制、ICT、人員配置計画、他の専任特例との重複などを確認するため、一律に兼務できるとは判断できません。

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許可区分と技術者配置を、受注前に一緒に確認します。

元請・下請の別、工事業種、請負代金額、下請契約総額、工期、施設用途と、配置候補者の資格・現在の担当現場をお知らせください。専任特例を検討する場合は、距離、施工体制、連絡員、ICT環境を含めて必要な確認事項を整理します。

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