最初に三つの問いを分けます

建設会社が派遣人材を受け入れるときは、次の三つを一つの「できる・できない」で決めないことが大切です。

  1. その業務へ労働者を派遣できるか
  2. その人を派遣先の営業所技術者等に選任できるか
  3. その人を工事現場の主任技術者・監理技術者に配置できるか

たとえば、工程・品質・安全管理を行う施工管理業務は、建設作業へ直接従事しない範囲で労働者派遣の対象になり得ます。しかし、そのことから直ちに、派遣された人を派遣先の営業所技術者等や法定の現場技術者にできるわけではありません。

「派遣社員は絶対になれない」「施工管理として派遣できるから選任もできる」と先に結論を決めず、制度ごとの要件と契約・勤務の実態を確認します。

営業所技術者等には常勤と専任が必要です

建設業許可では、許可を受けて建設業を営む営業所ごとに、許可業種に対応する資格・経験を持つ営業所技術者等を専任で置きます。国土交通省は、営業所技術者等について、その営業所に常勤していることが必要と説明しています。

大阪府の2026年3月改訂版手引きは、「専任のもの」を、その営業所に常勤して専らその職務に従事する人と説明しています。会社の社員については、次のような事情から専任性を判断します。

  • 実際の勤務場所・勤務時間・職務内容
  • 給与を誰がどのように支払っているか
  • 採用、配置、評価、懲戒等の人事権を誰が持つか
  • 社会保険、雇用保険、住民税等の常勤性確認資料
  • 他社や別の営業所で、専任に近い業務をしていないか

資格証があること、派遣先の名刺を使っていること、毎日派遣先へ通っていることだけでは、この確認に代わりません。営業所技術者等の役割や資格要件は、営業所技術者等の解説も併せてご覧ください。

派遣と出向は、契約名ではなく雇用実態を区別します

労働者派遣では、派遣労働者の雇用主は派遣元で、業務上の指揮命令は派遣先が行います。派遣先で働いているという事実だけで、派遣先との雇用関係が生じるわけではありません。

これに対して、大阪府手引きは、出向社員について、勤務状況、給与の支払状況、人事権の状況等から専任性が認められる場合には、営業所技術者等として取り扱うと明記しています。ただし、出向契約書があれば自動的に認められるという意味ではありません。

確認事項労働者派遣での基本関係出向で確認する実態
雇用関係派遣元との雇用関係を維持する在籍出向・転籍等の形態と出向先との関係を確認する
指揮命令業務上の指揮命令は派遣先が行う出向契約と実際の勤務・職務管理が一致するか確認する
専任性派遣先勤務だけで営業所技術者等の専任性を満たすとはいえない勤務、給与、人事権等から個別に判断される

派遣契約を「出向」と呼び替えたり、書面だけ出向契約へ変更したりしても、実態が派遣のままなら解決にはなりません。契約書、就業規則、給与負担、人事評価、社会保険、日々の指揮命令を対応させ、許可行政庁へ事前相談します。

施工管理・CAD等へ派遣できる場合があります

労働者派遣法は、建設工事の現場で建設、改造、修理、解体等の作業や、その準備作業へ直接従事する建設業務について、労働者派遣を禁止しています。

一方、厚生労働省の業務取扱要領や同省掲載資料では、次のような業務は、建設作業へ直接従事しない範囲で派遣の対象になり得るとされています。

  • 現場事務所の事務
  • CADオペレーターによる図面作成・修正
  • 施工計画、工程管理、品質管理、安全管理等の施工管理

ここでも、肩書ではなく実際の作業内容が基準です。施工管理として派遣された人に、空き時間だからと資材置場の整理、残材の片付け、機材の移動などを行わせると、禁止される建設作業または準備作業に該当する可能性があります。

受入れ前に業務記述書を具体化し、派遣契約、現場での指示系統、予定外作業が発生した場合の停止・相談手順を決めておきます。労働者派遣法上の個別判断は、都道府県労働局等の所管窓口や適切な専門家へ確認してください。

営業所技術者等と現場技術者の雇用要件を混同しません

営業所技術者等は、営業所で見積り、入札、請負契約の締結・履行などを技術面から支える役割です。主任技術者・監理技術者は、工事現場で施工計画、工程・品質管理、技術上の指導監督を担います。

主任技術者・監理技術者には、工事を施工する建設業者との直接的かつ恒常的な雇用関係が必要です。大阪府の案内は、直接的な雇用関係を有しない例として、在籍出向者や派遣を挙げています。

したがって、派遣された人が施工管理業務を行える場合でも、その人を請負業者の主任技術者・監理技術者として配置できるとは限りません。また、営業所技術者等について出向社員の専任性が認められる取扱いを、現場技術者へ機械的に当てはめることもできません。現場技術者の配置と兼務条件は、営業所技術者等と現場配置の関係で整理しています。

申請前に契約と勤務実態を五つの順序で確認します

人員不足への対応を検討するときは、次の順序で資料と実態を整理します。

  1. 予定業務を具体化する:営業所業務、施工管理、CAD、現場作業、準備作業を区別する
  2. 契約関係を確認する:派遣、在籍出向、転籍、自社雇用、業務委託のどれかを書面と実態で確認する
  3. 雇用・指揮命令を確認する:雇用主、給与負担、人事権、日々の指示者、社会保険等を整理する
  4. 必要な役割と要件を確認する:営業所技術者等、主任技術者・監理技術者、補助担当者を分ける
  5. 所管窓口へ事前相談する:許可行政庁と、必要に応じて労働局等へ資料を示して確認する

直接雇用への切替えを検討する場合でも、契約を切り替えれば許可が必ず取れるわけではありません。資格・実務経験、営業所への常勤・専任、ほかの許可要件を満たし、確認資料が揃う時点を申請先と確認します。建設業許可の要件全体も併せて確認してください。

最新情報の確認先

本記事は2026年10月2日時点で、次の一次資料を確認して作成しています。契約形態、勤務実態、工事の内容により判断が変わるため、申請・配置・派遣契約の締結前に最新版と個別事情をご確認ください。

よくある質問

派遣社員が資格を持っていれば、派遣先の営業所技術者等にできますか。

資格があることや派遣先へ毎日出勤していることだけでは判断できません。営業所技術者等には、その営業所への常勤・専任が必要です。通常の労働者派遣では雇用主が派遣元であるため、派遣契約、指揮命令、給与支払、人事権、社会保険等の実態を整理し、申請前に許可行政庁へ確認してください。

出向社員なら営業所技術者等になれますか。

出向社員でも当然に認められるわけではありませんが、大阪府の手引きは、勤務状況、給与の支払状況、人事権の状況等から専任性が認められる場合には、営業所技術者等として取り扱うとしています。出向契約書だけでなく、実際の勤務・労務管理の状況を確認します。

施工管理やCADオペレーターは建設現場へ派遣できますか。

建設現場の事務、CADオペレーター、工程・品質・安全管理等の施工管理は、建設作業やその準備作業へ直接従事しない範囲で派遣可能とされています。ただし、資材整理や残材片付けなどの作業を一部でも行わせると、禁止される建設業務に該当する可能性があります。職名ではなく実際の業務内容で判断します。

派遣された施工管理者を主任技術者や監理技術者にできますか。

主任技術者・監理技術者には、工事を施工する建設業者との直接的かつ恒常的な雇用関係が必要です。大阪府の案内では、在籍出向者や派遣など直接的な雇用関係を有しない場合は認められない例として示されています。施工管理業務へ派遣できることと、法定の現場技術者に配置できることは別です。

人員計画と申請時期を一緒に整理します

営業所技術者等の候補者について、資格、実務経験、現在の雇用形態、勤務場所、給与・社会保険等の資料を分かる範囲で整理してください。許可要件の確認と、人材の受入れ・配置に関する論点を分け、必要な確認先と準備の順序をご案内します。

建設業許可の技術者要件について相談する

通常のお問い合わせフォームへ、雇用契約書、給与明細、社会保険資料など個人情報を含む書類を送信しないでください。まずは概要をお知らせいただき、安全な資料の受渡方法を確認してください。