結論:赤字だけで決めず、許可区分と財務数値を確認します
「今期は赤字になったので、建設業許可を更新できないのではないか」という相談があります。しかし、損益計算書に当期純損失が計上されたことだけで、直ちに更新できないと決まるわけではありません。
一般建設業と特定建設業では、財産的基礎等の基準が異なります。また、同じ「赤字」という言葉でも、当期純損失、繰越利益剰余金のマイナス、欠損の額、自己資本不足、債務超過はそれぞれ別の状態です。まず、許可区分と直前決算のどの数値を見ているのかを整理します。
更新は財産要件だけを確認する手続でもありません。常勤役員等、営業所技術者等、適切な社会保険への加入、営業所、誠実性・欠格要件など、現在も許可要件を満たしていることが必要です。建設業許可の更新で確認する事項と併せて、期限と届出状況から確認してください。
まず「赤字」の意味を分けます
会計上の言葉を混同すると、必要以上に不安になったり、反対に必要な確認を見落としたりします。
- 当期純損失:一つの事業年度の最終的な損益がマイナスになった状態です。損益計算書で確認します。
- 欠損の額:特定建設業の財産要件で用いる法令上の考え方です。法人では、貸借対照表の繰越利益剰余金が負の場合に、その額が資本剰余金、利益準備金、任意積立金の合計額を上回る部分を確認します。
- 自己資本:法人の場合、貸借対照表の純資産の額です。一般建設業の500万円基準や、特定建設業の4,000万円基準に関係します。
- 債務超過:一般には、負債が資産を上回り、純資産がマイナスとなっている状態を指します。当期だけの赤字とは異なります。
- 流動比率:流動資産を流動負債で割って百分率で表したものです。短期的な支払能力を見る指標で、特定建設業では75%以上が基準です。
たとえば、当期純損失が出ても、過去の利益の蓄積により自己資本が十分に残り、特定建設業の四つの基準を満たす場合があります。反対に当期が黒字でも、流動比率や自己資本等の基準を満たさないことがあります。損益計算書の最終行だけで判断しないことが大切です。
一般建設業許可の財産的基礎は三つの方法で確認します
一般建設業では、倒産することが明白である場合を除き、申請時点で次のいずれかに該当すれば、財産的基礎等の基準に適合するものとして扱われます。
- 直前の決算で自己資本が500万円以上ある
- 金融機関の預金残高証明書により、500万円以上の資金調達能力を示す
- 許可申請直前の過去5年間、許可を受けて継続して営業した実績がある
大阪府の手引きでは、5年目の更新申請者は三つ目の基準に適合するものとみなし、特に書類は不要とされています。そのため、許可を継続して営業してきた一般建設業者は、単年度の赤字や自己資本が500万円未満という一点だけで更新できないとは限りません。
ただし、この考え方をすべての申請へ無条件に当てはめることはできません。許可の有効期限が過ぎ、新たに許可を受けようとする場合、大阪府では自己資本又は資金調達能力により確認します。許可換え新規、業種追加、事業承継なども申請区分と経過を確認してください。
また、過去5年間の継続実績で財産面を確認できても、ほかの許可要件が免除されるわけではありません。要件全体は大阪府で建設業許可を申請する前に確認したい要件で整理しています。
特定建設業許可は、更新時も四つの基準すべてを確認します
特定建設業では、原則として許可申請時の直前決算期の財務諸表により、次の基準をすべて満たす必要があります。
- 欠損の額が資本金の20%を超えていない
- 流動比率が75%以上
- 資本金が2,000万円以上
- 自己資本が4,000万円以上
この確認は更新を含む特定建設業の申請に必要です。「赤字でなければ大丈夫」「債務超過でなければ大丈夫」「四つのうち一つを満たせばよい」という基準ではありません。直前決算の貸借対照表と損益計算書を使い、それぞれの定義に沿って確認します。
大阪府では、直前決算時には資本金2,000万円の基準を満たしていなくても、申請日までの増資で基準を満たした場合、資本金については満たすものとして扱います。ただし、この取扱いは資本金に限られ、自己資本は財務諸表で基準を満たす必要があります。増資の時期、登記、ほかの三基準、更新期限を含めて確認するため、満了直前の対応で必ず解決できるとは限りません。
| 比較項目 | 一般建設業 | 特定建設業 |
|---|---|---|
| 単年度赤字だけで更新不可か | 一律には決まりません | 一律には決まりません |
| 財産的基礎等 | 三つの確認方法のいずれか | 四つの数値基準すべて |
| 更新時の主な確認 | 許可の継続期間、他の許可要件、未提出届 | 直前決算の財務数値、他の許可要件、未提出届 |
特定から一般への変更は、自動的な切替えではありません
特定建設業の財産要件を満たすことが難しい場合、今後の工事契約によっては一般建設業を検討する場面があります。しかし、特定許可が更新できなければ自動的に一般許可へ切り替わるわけではありません。
元請として受注する工事、建設業者へ発注する下請契約の総額、現在の許可業種、申請区分、廃業届の要否、許可の空白を避ける日程を整理する必要があります。将来の受注計画を確認せず、財務数値だけを理由に一般へ変更すると、予定している工事を請け負えなくなるおそれがあります。
更新前に、決算変更届と各種変更届の提出状況を確認します
建設業者は、毎事業年度が終了した後4か月以内に、いわゆる決算変更届を提出します。届出には、工事経歴書、直前3年の工事施工金額、建設業法様式の財務諸表などが含まれます。
大阪府の変更等届出の手引きでは、変更事項や決算期の届出が未提出の場合、許可の取消しの対象となることや、更新・業種追加・経営事項審査の申請ができなくなると案内されています。未提出年度があれば「更新と一緒に出せばよい」と決めず、年度ごとの資料とほかの変更事項を確認し、処理の順序を整理します。
更新申請の直前に数年分をまとめようとすると、工事資料や財務資料の確認に時間がかかります。決算変更届の提出期限と必要書類を確認し、毎年の副本又は電子申請の完了記録を残してください。
建設業法様式の財務諸表は閲覧対象になることがあります
大阪府には、建設工事の注文者や下請負人等が施工能力、施工実績、経営内容を確認し、建設業者を選ぶ際の参考にするための閲覧制度があります。現在有効な大阪府知事許可業者が提出した許可申請書や変更届のうち、建設業法上の閲覧対象となる様式を、閲覧所で誰でも無料で閲覧できます。本人確認書類の提示、件数や時間、コピー・撮影禁止などの利用条件があります。
決算変更届に含まれる工事経歴書、直前3年の工事施工金額、貸借対照表、損益計算書、完成工事原価報告書、株主資本等変動計算書、注記表などには、閲覧対象となるものがあります。大阪府で電子申請システムを使って提出した場合は、申請書類のうち閲覧対象のものが電子閲覧に供され、インターネット上で検索・閲覧できるようになると案内されています。
一方、建設業法様式の財務諸表と、税務署へ提出する法人税・所得税の確定申告書は同じ書類ではありません。納税証明書、預金残高証明書、常勤性や経験を示す確認資料なども、閲覧対象様式と同じ範囲ですべて公開されるわけではありません。「決算関係の全資料がネットに公開される」と考えず、提出方法と閲覧対象様式を分けて確認してください。
許可業者情報の公開範囲や、その情報を見た事業者から連絡が来る場合については、建設業許可情報が公開される仕組みと営業電話への対応でも解説しています。
公開を意識しても、数値や区分を恣意的に変えてはいけません
建設業法様式の財務諸表は、会社の決算書を基礎に、建設業の様式と勘定科目に合わせて作成します。閲覧される可能性があるからといって、完成工事高と兼業売上高、完成工事原価の科目、資産・負債の区分などを実態と異なる形に変えることはできません。
元の決算書、税務申告、工事経歴書、直前3年の工事施工金額との整合を確認し、取引先から質問されたときに事実に沿って説明できる状態にします。税務上の処理や会計判断そのものは、税理士等へ確認してください。
更新前のチェックリスト
- 許可の満了日と更新申請の予定日を確認した
- 一般建設業・特定建設業と許可業種を確認した
- 前回申請後の決算変更届を毎年度提出している
- 商号、所在地、役員、営業所等の変更届を確認した
- 直前決算の貸借対照表と損益計算書を用意した
- 一般又は特定の財産要件に沿って数値を確認した
- 常勤役員等と営業所技術者等が現在も要件を満たしている
- 社会保険、営業所、欠格要件等の変更がないか確認した
建設業許可の有効期間は5年間です。大阪府は満了日の3か月前から更新申請を受け付けており、満了日の30日前までの申請を案内しています。財務数値や未提出届を確認する時間を確保するため、決算確定後や期限が近づく前に準備を始めてください。社会保険の加入状況を確認する際のポイントも併せて確認できます。
当事務所へ相談できること
当事務所では、大阪府知事許可を中心に、許可区分、更新期限、過年度の決算変更届、現在の許可内容、直前決算の財務数値、必要資料を確認し、行政書士業務の範囲で更新申請や届出の準備を支援します。建設業許可更新サポートと料金案内もご確認ください。
許可や更新の結果を保証するものではありません。税務申告や会計処理そのもの、資本増加の登記、資金調達・融資の判断は当事務所の行政書士業務とは別です。必要に応じて、税務は税理士、登記はご本人又は司法書士、融資は金融機関等へ確認してください。
まとめ:決算書の一行ではなく、更新に必要な全体を確認します
赤字決算でも、建設業許可を更新できる場合があります。一般建設業では財産的基礎等の三つの確認方法を、特定建設業では直前決算に基づく四つの基準すべてを確認します。当期純損失だけで結論を出さず、許可区分、継続期間、自己資本、欠損の額、流動比率、届出状況を分けて見てください。
更新期限が近い、未提出の決算変更届がある、特定建設業の財産要件が気になる場合は、手元の許可通知書、直近の財務諸表、過去の届出控えをそろえて早めに整理します。建設業許可の更新について相談する際は、許可番号、満了日、一般・特定の別、直近の決算期を分かる範囲でお知らせください。
最新情報の確認先
- 国土交通省「建設業の許可とは」
- 国土交通省「許可の要件」
- 大阪府「建設業許可申請の手引き(令和8年3月改訂版)」
- 大阪府「建設業許可変更等届出の手引き(令和8年3月改訂版)」
- 大阪府「建設業許可・経営事項審査に係る電子申請」
- e-Gov法令検索「建設業法」
※制度・提出方法・閲覧方法は変更されることがあります。本記事は2026年9月13日時点の公式情報に基づきます。申請時には、申請先の最新資料をご確認ください。
よくある質問
赤字決算でも一般建設業許可を更新できますか。
単年度の赤字だけで一律に更新できないとは決まりません。一般建設業では、自己資本500万円以上、500万円以上の資金調達能力、許可申請直前の過去5年間に許可を受けて継続して営業した実績のいずれかで財産的基礎等を確認します。更新時には、財産要件以外の要件と未提出届の有無も確認が必要です。
赤字決算でも特定建設業許可を更新できますか。
当期純損失が出たという事実だけでは結論は出ません。特定建設業の更新では、原則として申請直前の決算期の財務諸表により、欠損の額、流動比率、資本金、自己資本の四つの基準をすべて確認します。数値と算定方法を個別に確認してください。
債務超過でなければ特定建設業許可を更新できますか。
債務超過でないことだけでは足りません。特定建設業では、欠損の額が資本金の20%を超えないこと、流動比率75%以上、資本金2,000万円以上、自己資本4,000万円以上のすべてを満たす必要があります。
決算変更届を出していなくても更新申請できますか。
大阪府の手引きでは、決算期の届出が未提出の場合、更新等の申請ができなくなると案内されています。未提出年度があるときは放置せず、ほかの変更届も含めて提出状況と処理の順序を確認してください。
建設業者の決算書は誰でも閲覧できますか。
大阪府では、現在有効な大阪府知事許可業者が提出した書類のうち、建設業法上の閲覧対象様式を閲覧所で誰でも無料で閲覧できます。電子申請した閲覧対象書類は電子閲覧に供されます。一方、税務署へ提出した確定申告書や審査用の確認資料まで、同じ範囲ですべて公開されるわけではありません。
関連ページ
- 大阪の建設業許可申請サポート — 許可要件、申請区分、必要書類、料金を確認できます。
- 建設業許可更新サポート — 更新期限、未提出届、必要資料、料金を案内しています。
- 決算変更届サポート — 毎年の届出内容と準備資料を確認できます。
- 建設業支援 — 新規許可から更新、決算変更届、経審、入札参加資格まで案内します。




