建設業許可の「賞罰欄」はどの書類にあるか
ここで扱うのは、一般的な就職用の履歴書ではありません。建設業許可申請で使用する、対象者の略歴や住所・生年月日等を記載する書類の欄です。大阪府の手引きでは、主に次の様式を確認します。
- 常勤役員等の略歴書:様式第7号別紙など
- 許可申請者の住所、生年月日等に関する調書:様式第12号
- 建設業法施行令第3条に規定する使用人の住所、生年月日等に関する調書:様式第13号
申請区分や対象者によって必要な様式は異なります。例えば、常勤役員等について略歴書を提出する場合、同じ人の様式第12号を重ねて作成する必要がない取扱いがあります。全員に同じ書類を配るのではなく、役割と必要書類を先に整理しましょう。常勤役員等の役割と要件も併せて確認できます。
法人では代表者だけでなく、建設業法上の役員等や、営業所の代表者など令第3条使用人に当たる人の確認が必要です。ただし、欠格要件の確認対象と各様式の作成・記載対象がすべて同じとは限らず、全従業員が一律に対象になるわけでもありません。大阪府の手引き第3章に沿って対象者を確定します。
賞罰がなければ「なし」と書く
大阪府の記載例は、賞罰欄について、行政処分等だけでなく刑事罰等も記載し、賞罰がなければ「なし」と記載するよう案内しています。空欄は、該当事項がないのか、確認していないのかを区別できません。
過去に処分を受けている場合は、その内容や日付を確認して記載します。「建設業と関係のない出来事だから」「かなり昔のことだから」という自己判断で省略しないことが大切です。どこまでの事項を書くのか、どの日付を記入するのかが分からなければ、具体的な資料を示して申請先に確認してください。
なお、刑事罰としての「罰金」、交通反則通告制度の「反則金」、刑罰ではない「過料」、運転免許の停止等の行政処分は別のものです。「お金を払った」「警察で手続きをした」という記憶だけでは、処理内容を特定できません。
スピード違反の「反則金」と「罰金」は違う
交通反則通告制度は、一定の交通違反について、反則金を納付すると刑事裁判等を受けずに手続が終了する仕組みです。その場合、罰金刑を受けたことにはならず、その手続によって前科がつくものでもありません。一方、刑事手続に進み、略式命令や判決で罰金刑を受けた場合は、刑事罰です。警察庁の制度説明も、この違いを示しています。
| 区分 | 基本的な意味 | 刑事罰・前科 | 申請前の確認 |
|---|---|---|---|
| 反則金 | 交通反則通告制度に基づく金銭の納付 | 納付して手続が終了した場合は罰金刑ではなく、前科もつかない | 罰金刑と同一視しない。別の行政処分の有無や記載要否に迷う場合は申請先へ確認 |
| 罰金 | 刑事手続で科される刑罰 | 略式命令や判決による刑事罰 | 賞罰欄への記載と、欠格要件に当たるかを別々に確認 |
重大な速度違反等が刑事手続となり、罰金刑を受ける場合はあります。ただし、赤切符なら必ず罰金になると決まるわけではありません。また、青切符の交付を受けても、反則金を納付せず刑事手続に移行する場合があります。切符の色だけで終わらせず、最終的にどの手続で処理されたかを確かめます。
交通違反の罰金は、必ず5年間の欠格になるのか
道路交通法違反で罰金刑を受けたという事実だけで、直ちに建設業法第8条第8号の5年欠格になるわけではありません。同号は、罰金刑を受けたすべての犯罪を対象にしているのではなく、法令・罪名を限定しています。
対象には、建設業法違反、建設工事の施工・労働者の使用に関する政令指定の法令の規定違反、暴力団対策法の所定の規定違反、傷害・暴行・脅迫・背任など所定の犯罪が含まれます。政令指定には、建築基準法の所定の命令違反や、労働者派遣法の建設業務への派遣禁止違反などがありますが、法律名が一致するだけでなく、対象の条項まで照合する必要があります。
したがって、交通違反が罰金刑として処理された場合には、まず賞罰欄に記載する刑事罰として確認し、そのうえで罪名と適用条文が欠格要件に当たるかを調べます。「欠格には当たらないはずだから書かなくてよい」とは判断しません。根拠は建設業法第8条と同法施行令第3条の2です。
一方、拘禁刑以上の刑は、罪名を限定した罰金刑とは別に、第8条第7号の検討が必要です。現行法の表記は「拘禁刑」であり、旧制度の懲役・禁錮についても、人の資格に関する経過措置により対象から外れるわけではありません。大阪府手引きに旧表記が残る箇所があっても、現行条文と令和4年法律第68号第443条の経過措置を併せて確認します。
「5年」は、原因・起算点・対象者を分けて確認する
建設業許可で出てくる5年間の制限は、一種類ではありません。主に次の区別が必要です。
- 拘禁刑以上の刑:第8条第7号は、刑の執行を終えた日、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない場合を定めています。
- 対象法令・犯罪による罰金刑:第8条第8号も、所定の刑の執行終了等から5年を基準とします。単に違反日・逮捕日・判決日から数えるものではありません。
- 不正の手段による許可の取消し等:第8条第2号は、第29条第1項第7号・第8号による取消しの日から5年を経過しない者について定めています。刑の執行終了日とは別の起算点です。
- 取消処分前の廃業届等:第8条第3号・第4号には、所定の聴聞通知後、処分等までの間に廃業届を提出した場合の規定があります。届出日から5年の制限や、通知前60日以内の役員等への適用が問題になるため、廃業すれば制限を避けられるとは考えられません。
- 取消しに伴う営業開始禁止:第29条の4第2項では、上記の理由で法人の許可を取り消す際、その役員等や相当の責任を有する所定の使用人に対し、取消しに係る建設業の営業開始を5年間禁止することを定めています。軽微な工事のみを請け負う営業の除外など、対象範囲も条文に沿って確認します。
罰金刑では納付日が執行終了日の確認につながりますが、すべてのケースを「お金を払った日から5年」とまとめることはできません。執行猶予のある刑についても、猶予期間の経過や取消しの有無などにより扱いが異なるため、実刑と同じ数え方を一律に当てはめないでください。
確認の順序は、まず賞罰欄に書く事項か、次に欠格要件に当たるか、最後にどの規定の期間をどの日から数えるか、です。法人では対象者ごとの事情と法定の除外規定も確認します。許可要件の全体像は、建設業許可の要件の解説をご覧ください。
記載漏れはいつ虚偽申請になるのか
建設業法第8条は、申請書・添付書類に重要事項の虚偽記載がある場合や、重要な事実の記載が欠ける場合、許可してはならないと定めています。
また、国土交通省の建設業許可事務ガイドラインは、常勤役員等の略歴書の賞罰欄に具体的記載がなく、行政処分等の事実が確認され、その事実が法第8条に該当する場合、原則として虚偽申請として扱う旨を示しています。
これは、どのような小さな書き漏れでも自動的に5年欠格になる、という意味ではありません。申請時の不許可と、不正の手段で得た許可の取消し、その後の欠格・営業開始禁止は、根拠と手続が異なります。一方で、「悪気はなかった」「役所が調べると思っていた」と説明すれば必ず問題がなくなるわけでもありません。
未確認の事項があるときは、欠格要件に該当しない旨の誓約書を先に完成させず、事実確認を済ませてから申請内容を確定します。
大阪府の答申は、記憶頼みの日付の危険性を示している
大阪府行政不服審査会の令和4年度諮問第45号に係る答申では、会社の役員の傷害罪による罰金刑が問題となりました。これは速度違反の事例でも、単なる欄の書き忘れの事例でもありません。
実際の罰金納付日は平成29年12月8日でしたが、略歴書には平成28年7月31日と記載され、役員等が欠格要件に該当しない旨の誓約書を添えて令和3年に許可を受けていました。その後、会社の許可が取り消され、役員に対する5年間の新たな解体工事業の営業開始禁止が争われました。
答申は、不正の手段について故意の検討が必要であるとの立場を示したうえで、欠格要件に当たるかもしれないと認識しながら誓約して申請したなどの具体的事情から、不正の手段による許可取得と判断しています。審査請求は棄却すべきとの結論でした。
ここから読み取れる教訓は、記憶を頼りに日付を書き、後の調査や訂正に任せてよいわけではない、ということです。日付が不明であることを窓口で伝えても、不正確な申請や誓約の問題が解消されるとは限りません。
提出前に確認したい資料と相談のタイミング
過去の刑や処分が分かった段階で、対象者本人と次の資料を確認します。提出直前まで保留にせず、必要な確認に使える時間を確保しましょう。
- 判決書・略式命令等:罪名、適用法令、刑の種類、執行猶予の有無
- 罰金の納付関係資料、刑の執行終了日等が分かる資料
- 行政処分通知書、運転免許に関する処分内容が分かる書類
- 本人への聴取記録と、法人の役員・令第3条使用人等の対象者一覧
- 大阪府の最新様式・記載例と、今回提出する略歴書・調書・誓約書
書類が手元になければ、どの機関で何を確認できるかを個別に調べます。警察・検察庁・裁判所などの確認先や、資料の取得方法・発行可否は一律ではありません。行政書士が前科記録を当然に取得できるというものでもなく、刑事事件の評価や争いについては、必要に応じて弁護士への相談が必要です。
行政書士への相談では、建設業許可の申請に向けた対象者・必要書類・確認事項を整理し、許可行政庁への事前相談につなげます。一人親方など個人事業の場合も、法人でないことだけを理由に確認を省略することはできません。
まとめ:隠さず、推測せず、事実を確かめてから提出する
賞罰欄では、反則金と罰金を分け、記載対象と欠格要件を分けることが大切です。5年の判断に進む前に、処分内容と日付が資料で確かめられているかを見直してください。不明な前歴がある場合は、空欄や記憶だけの記載で提出せず、事前に確認・相談しましょう。
よくある質問
スピード違反の反則金も賞罰欄に書く必要がありますか?
反則金と罰金刑は別です。反則金を納付して交通反則通告制度の手続が終了した場合は、罰金刑と同一ではありません。ただし、具体的な処理内容や大阪府の様式上の記載要否に迷う場合は、自己判断で省略せず申請先へ確認してください。
スピード違反で罰金を受けると、5年間建設業許可を申請できませんか?
道路交通法違反の罰金刑があるだけで、直ちに建設業法上の5年欠格になるとは限りません。罪名、刑の種類、建設業法第8条の対象法令・犯罪に該当するか、刑の執行終了日等を個別に確認します。
賞罰がない場合は空欄でもよいですか?
大阪府の記載例では、賞罰がない場合も空欄にせず「なし」と記載するよう案内されています。使用する様式の最新記載例を確認してください。
罰金を納付した日を覚えていない場合、だいたいの日付で提出できますか?
推測した日付で提出すべきではありません。欠格期間の起算点に関わることがあるため、関係資料を確認し、確認方法が分からなければ申請先や専門家へ事前に相談してください。
賞罰欄の記載漏れがあると必ず5年間申請できなくなりますか?
必ずそうなるわけではありません。重要事項の虚偽記載・重要事実の記載欠落がある申請は許可されません。不正の手段で許可を得たとして取消しになれば、5年間の欠格等につながることがあります。事実の内容と手続段階によって扱いが異なります。
最新情報の確認先
制度・資料の最終確認日:2026年9月21日。大阪府知事許可を念頭に置いた一般的な解説です。個別の記載要否や欠格要件は、具体的な事実と最新の法令・手引きにより確認してください。
- 大阪府「建設業許可の手引き」案内・改訂情報
- 大阪府「建設業許可申請の手引き(令和8年3月改訂版)」(欠格要件:2-29、略歴書の記載例:3-27、調書・提出書類確認:第3章)
- 国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」(令和7年2月1日適用)(略歴書の賞罰欄:15ページ)
- e-Gov法令検索「建設業法」(第8条、第29条、第29条の4)
- e-Gov法令検索「建設業法施行令」(第3条、第3条の2)
- 警察庁「交通反則通告制度(青切符)」の説明
- 大阪府行政不服審査会・令和4年度諮問第45号答申



