「5年以上の経験」と「確定申告書5期分」が一致しない理由

一般建設業の許可を受けるためには、建設業に係る経営業務を適正に管理できる体制が必要です。代表的な基準の一つとして、法人では常勤役員等のうち一人、個人では本人又は支配人のうち一人が、建設業に関し5年以上、経営業務の管理責任者としての経験を有することが挙げられます。

ここで確認するのは、確定申告書の冊数ではなく、要件に該当する経験を客観的な資料で確認できる期間です。決算書が5期分あっても、それぞれは一つの事業年度を単位に作成された書類です。役員就任日や最初の建設工事資料の日付が第1期の期首より後であったり、最後の工事資料の日付が第5期の期末より前であったりすると、全資料の重複期間は5年より短くなります。

反対に、6年度分の税申告資料を持っているだけで、5年以上の経営経験を証明できるわけでもありません。建設業を営んだ事実、工事実績、本人の役職・立場が同じ期間について確認できることが必要です。

建設業許可の要件全体は、大阪府で建設業許可を申請する前に確認したいポイントで整理しています。

大阪府で経験期間を確認する資料

大阪府の「建設業許可申請の手引き(令和8年3月改訂版)」は、法人の役員として経営経験を証明する場合、次の三つで確認できた期間が全て重なる範囲を「経験年数」としています。

1. 営業の実態を確認する資料

法人では、法人税確定申告書のうち別表一と決算報告書等により、証明する会社が営業していた実態を確認します。電子申告の場合は税務署の受信通知も確認対象です。令和7年以降の申告分は税務署の受付印が不要となった取扱いも、現行手引きに反映されています。

税申告資料は、会社がその事業年度に営業していたことを確認する重要な資料ですが、これだけで本人の役員経験や建設工事の実績が確認できるわけではありません。

2. 営業の実績を確認する建設工事資料

営業の実績は、工事内容、工事期間、請負金額が確認できる建設工事の資料で確認します。大阪府の手引きは、法令上求められる経験期間について毎年分の代表的な建設工事を確認し、ある年の確認工事と翌年の確認工事との間隔が1年以上になる場合は、その間に経験した別の工事実績も確認するとしています。

したがって、「請求書を各年度1枚ずつ用意すれば必ず足りる」とは限りません。請求書、契約書、注文書・請書など、実際に残っている資料の名称だけでなく、日付の間隔、工事内容、工事期間、請負金額を確認します。

3. 法人役員等としての期間を確認する資料

法人役員の経験では、履歴事項全部証明書や閉鎖事項全部証明書により、取締役等へ就任し、重任し、退任するまでの期間が途切れていないかを確認します。併せて、法人税申告書の役員給与等の内訳書などにより、常勤の役員として扱われていたことを確認します。

登記上の就任期間が5年以上あっても、その全期間について会社の営業実態と建設工事の実績を確認できなければ、そのまま5年の経験として扱えるとは限りません。

4. 全ての資料で確認できる期間を重ねます

法人役員の例では、次の三つのうち、最も遅い始期から最も早い終期までが重複期間です。

確認する事実 主な資料 期間を区切る日付の例
会社が営業していたこと 法人税確定申告書の別表一、決算報告書等 各事業年度の期首・期末
建設業の工事実績があること 工事内容・工事期間・請負金額が分かる請求書、契約書等 最初・最後に確認できる工事の日付
本人が役員等であったこと 履歴事項全部証明書、閉鎖事項全部証明書、役員給与等の内訳書等 就任日、重任日、退任日

この考え方は、大阪府手引きに掲載された例でも示されています。手引きの例は、確定申告書で確認できる期間、建設工事の請求書で確認できる期間、役員登記の期間を重ね、三つ全てが重なる期間を経験年数として計算しています。

5期分でも4年9か月になる日付例

次は、期間の数え方を説明するための仮定例です。実在の申請や大阪府手引きの掲載事例をそのまま再現したものではありません。

前提を次のように置きます。

  • 会社の事業年度は毎年4月1日から翌年3月31日まで
  • 証明対象者は2020年7月1日に取締役へ就任し、その後も継続している
  • 建設工事の実績は2020年7月1日から2026年1月1日まで、毎年の代表的な工事資料で連続して確認できる
  • 手元でまず確認した税申告資料は、2021年4月1日から2026年3月31日までの直近5期分

この場合の重複期間は次のようになります。

資料 確認できる期間
直近5期分の法人税確定申告書・決算報告書 2021年4月1日〜2026年3月31日
建設工事の実績資料 2020年7月1日〜2026年1月1日
役員期間等の資料 2020年7月1日〜申請時点

三つの始期のうち最も遅い日は2021年4月1日、終期のうち最も早い日は2026年1月1日です。したがって、全てが重なる期間は次のとおりです。

2021年4月1日から2026年1月1日まで = 4年9か月

税申告資料は5期分ありますが、最後の工事実績を確認できる日が期末より3か月前であるため、重複期間は5年に届きません。「5期分ある」という冊数だけを数えると、この不足を見落とします。

6年度分が必要になり得るケース

上の日付例で、直近5期分より一つ前の2020年4月1日から2021年3月31日までの税申告資料も確認できるとします。この6年度分を通じて営業の実態を確認できれば、三つの資料の重複期間は次のように変わります。

  • 税申告資料の始期:2020年4月1日
  • 役員期間と工事実績の始期:2020年7月1日
  • 工事実績を確認できる終期:2026年1月1日

最も遅い始期は2020年7月1日、最も早い終期は2026年1月1日となるため、重複期間は5年6か月です。この例では、5年以上を覆うために一つ前の年度を含む6年度分の税申告資料が必要になります。

ただし、6年度分を追加すれば必ず認められるという意味ではありません。前年度にも会社が建設業を営んでいたこと、その年度から本人が要件に該当する立場であったこと、工事実績を適切な間隔で確認できることが必要です。

次のような場合は、5期分より広い期間の資料が必要になる可能性があります。

  • 役員就任日が事業年度の途中である
  • 建設業を開始した日が事業年度の途中である
  • 最初又は最後に確認できる代表的な工事日が期首・期末から離れている
  • 代表的な工事と翌年の工事との間に1年以上の空白がある
  • 税申告資料、工事資料、登記・役員給与資料のいずれかの期間が短い
  • 複数の会社又は個人事業の期間を組み合わせて証明する

新設会社や以前の勤務先・個人事業での経験を利用する場合は、新設会社・開業直後の建設業許可と他社経験の証明もご確認ください。

5年度分で足りる可能性があるケース

一方、次のように各資料が5年以上の同じ期間を途切れなく覆っていれば、6年度分が必ず必要になるわけではありません。

  • 第1期の期首以前から役員等に就任している
  • 第1期の期首から第5期の期末まで営業の実態を確認できる
  • 5年以上にわたり、代表的な建設工事の資料が適切な間隔で確認できる
  • 登記と役員給与等の資料で、証明対象者の立場が途切れず確認できる

過去に建設業許可を受けていた事業者での経験など、税申告資料と工事資料を一から並べる場合とは確認方法が異なることもあります。以前の許可申請書、変更届、許可通知書、決算変更届等を利用できるかは、経験の内容と申請先の手引きにより確認します。

必要年度数を先に決めて書類を集めるのではなく、証明したい始期と終期を決め、各資料がどこまで連続しているかを照合することが大切です。

法人役員と個人事業主では確認資料が異なります

大阪府の手引きでは、個人事業主としての経験について、営業の実態と営業の実績の両方で確認できる期間を経験年数としています。

法人役員の場合

  • 法人税確定申告書の別表一、決算報告書等
  • 建設工事の内容・期間・請負金額が分かる資料
  • 履歴事項全部証明書・閉鎖事項全部証明書
  • 役員給与等の内訳書など、常勤役員としての状況を確認する資料

個人事業主の場合

  • 所得税確定申告書の第一表等
  • 建設工事の内容・期間・請負金額が分かる資料
  • 必要に応じて、開業や事業継続、本人の状況を確認する資料

個人事業主では法人役員のような商業登記上の役員就任日はありませんが、営業の実態と建設工事の実績が確認できる期間を重ねる点は同じです。申告形態、電子申告の有無、資料の名義等によって確認内容が変わるため、法人用のチェックリストをそのまま使わないようにします。

大阪府へ相談する前に整理するチェックリスト

  • 証明する人と、申請時の役職・立場を確認した
  • 建設業の経営経験として使いたい始期・終期を日付で書き出した
  • 法人税又は所得税の確定申告資料を年度順に並べた
  • 工事内容・工事期間・請負金額が分かる資料を日付順に並べた
  • 代表的な工事資料の間隔に1年以上の空白がないか確認した
  • 法人では、就任・重任・退任の登記と役員給与等の資料を確認した
  • 税申告資料、工事資料、役員等の資料が全て重なる始期・終期を計算した
  • 他社経験、個人事業、過去の許可記録を組み合わせる必要があるか確認した
  • 参照している大阪府手引きの版と更新日を確認した

申請先によって確認資料の扱いが異なる理由は、建設業許可は都道府県で違うのかで解説しています。資料の不足や空白が見つかったときは、別の資料を自己判断で作るのではなく、証明したい事実と残っている原本を整理して申請先へ確認します。

まとめ:年度数より、資料が重なる始期と終期を確認します

建設業に関する5年以上の経営経験は、確定申告書の冊数だけで判断するものではありません。大阪府の法人役員の例では、営業の実態、建設工事の実績、役員等としての期間を資料で確認し、その全てが重なる期間を数えます。

5期分の税申告資料があっても、役員就任日や工事実績の日付によって4年9か月となる場合があります。一方、5年以上の重複期間を確認できるなら、全案件で一律に6年度分が必要になるわけではありません。申請前に、各資料を年度別だけでなく日付順にも並べてください。

当事務所では、申請する会社・個人事業の状況と資料の残り方を確認し、どの期間を何の資料で証明するかを整理します。確定申告後に建設業許可を申請する時期も参考に、準備時期をご検討ください。

最新情報の確認先

本記事は2026年9月18日時点で、次の一次情報を確認して作成しています。法令、手引き、審査基準、確認資料及び申請運用は変更されることがあるため、実際の申請時点でも最新版をご確認ください。

よくある質問

確定申告書は必ず6年分必要ですか。

いいえ。全案件で一律に6年分必要という意味ではありません。証明したい経験の始期・終期、確定申告書等で確認できる営業期間、建設工事の実績を確認できる期間、法人役員等としての期間を重ね、5年以上を確認できる年度数を整理します。

5期分の決算書があれば5年経験を証明できますか。

5期分あることだけでは判断できません。最初の資料で確認できる日、役員就任日、最後の工事実績日などが期首・期末と一致しなければ、全資料の重複期間が5年未満になることがあります。各資料の日付を置いて再計算します。

確定申告書以外には何を確認されますか。

大阪府の手引きでは、法人役員の経験について、営業の実態を示す法人税確定申告書の別表一・決算報告書、工事内容・工事期間・請負金額が分かる建設工事資料、役員期間が分かる商業登記簿謄本、役員給与等の内訳書などを確認します。個人事業主では資料の組合せが異なります。

工事の請求書は各年度1件あれば足りますか。

各年度1件あれば必ず足りるとは限りません。大阪府の手引きは、法令上求められる経験期間について毎年分の代表的な建設工事を確認し、確認する工事と翌年の工事の間隔が1年以上になる場合は、その間に経験した別の工事実績も確認するとしています。日付、工事内容、工事期間、請負金額を個別に確認します。

他府県への申請でも同じ資料が必要ですか。

5年以上の経営経験という法令上の要件は全国共通ですが、経験の確認資料や提示・提出方法は申請先の手引き等で異なる可能性があります。大阪府の資料構成をそのまま他府県や国土交通大臣許可へ当てはめず、実際の申請先の最新版を確認してください。

関連ページ

経験期間を、年度数ではなく日付で確認します。

確定申告資料、建設工事の資料、役員登記等をお持ちの範囲でご用意ください。証明したい期間と、各資料で確認できる期間の重なりを整理し、不足する年度や資料を申請前に確認します。

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