古物商としての活動を行いたい方にとって、営業所の存在は非常に重要です。しかし、営業所の選択やその必要性、さらには設置のメリットやデメリットについて知っていますか?今回は、古物商として営業所を持つことの意義や、その選択肢について詳しく解説します。

営業所の定義は?

古物の営業=『古物の売買をする場所』

営業所の外での古物営業は許されていません。取引相手の住所や居所を例外として、営業所外での古物の買取や交換(レンタル)行為は禁止されています(14条)。

また、各営業所には古物営業を適切に運営するための「管理者」を配置する必要があり、古物商としての活動を示す看板や標示を掲示することが義務付けられています(12条、13条)。

「管理者」として適任とされる人は、未成年ではない限り、前回の記事で触れた古物商の許可要件を満たしていれば、どなたでも就くことができます1。また、許可を求める申請者自身が、この管理者の役割を担うことも許されています。

また、営業所は、古物の買取を記録する帳簿の保管場所であり、税務上必要な会計帳簿とは異なるものです(18条)。犯罪予防や公序良俗の維持のため、警察官が営業所に立ち入り調査を行うこともあります(22条)。

営業所は必須?

大半のケースでは、営業所は絶対条件となります。しかし、特定の例外を除いて必要ではない場合もわずかに存在します。

第3条によれば、特定の営業を行おうとする際、営業所(もしくは住所や居所、以下同じ意味で使用)が存在する都道府県においては、都道府県公安委員会(以下「公安委員会」と称する)の許可が不可欠です。

この条文を逆に捉えるとと、営業所が不要とされるケースも考えられます。例えば、「ネット上だけで取引をしたい」や「警察の立入り検査を避けたい」という理由から「営業所不要」を選びたいと願う方もいるでしょう。

しかしながら、警察署をに申請書を出した際には多くの場合「営業所必要」との指摘を受けることとなります。

「営業所なし」という選択が示唆するのは、一定の場所に固定せず、国内各地を巡りながら古物の売買を行う、いわゆる行商のみと言うのスタイルを指します。

仮に、自社のECサイトやメルカリやヤフーオークションなどのオンライン上での古物取引を専業とし、自身で商品の在庫を保有しない場合であっても、営業の拠点となる場所が存在するため、「営業所あり」としての申請が必要となります。

単に営業活動を行う場所だけでなく、営業所は帳簿の保存や、業務全般を監督する「管理者」の存在、さらに営業の具体的な状況を把握できる場所でなければならないため、気軽に「営業所なし」の選択をすることは難しいと考えられています。

自宅を営業所として利用することは可能か?

自宅を営業所として使用することは許可されています。

最低でも1人の管理者が常駐し、営業に関する帳簿の保存が可能な環境が整っていれば、特に問題は生じません。

許可の際、住居としての部分と営業としての部分を明確に区分けする必要は特に求められていません。

ただ、自宅が親や第三者の所有物である場合、管轄する警察署のある都道府県によっては、その物件の所有者からの使用許可書の提出が必要とされることがあります。

賃貸の住宅やマンションを使用する場合は、さらなる検討や確認作業が必要となるでしょう。

賃貸アパートやマンションを営業所として使えるの?

「営業目的での使用が出来る」賃貸のアパートやマンションなら営業所として利用することは可能です。「営業活動禁止」の賃貸物件の場合はオーナーや管理会社から使用承諾書を貰う必要があります。

多くの賃貸物件や集合住宅では、契約書や管理規約に「営業活動の禁止」などの条項が含まれていることが一般的です。

もし、賃貸の住宅を営業所として申請する際には、申請書と一緒に賃貸借契約書のコピーを添付して提出することが求められます。そして、その契約書内に「営業活動を禁じる」旨の記述がある場合、賃貸借契約書のコピーに加えて建物所有者の使用承諾書が必要となります。

自らがオーナーとなっているマンションであっても、管理組合の規約などで営業活動が制限されている場合があります。そのような場合には、管理組合からの許可を得て、使用承諾書が必要になります。

このように、賃貸物件やマンションを営業所として利用する際には、契約内容や管理規約をしっかりと確認し、必要な許可を得ることが重要です。

バーチャルオフィスや共有オフィスは使用できる?

実際の物理的な場所を持たないバーチャルオフィスは、営業所としての要件を満たすことができません。一方で、実際のスペースを提供するレンタルオフィスや共有オフィスは、独立した区画が確保されていれば使用することができます。

バーチャルオフィスは、住所や連絡先のみを提供するサービスです。物理的なオフィススペースが存在しないため、営業の実態を確認する場としては不適切です。

一方、レンタルオフィスや共有オフィスは、実際に物理的なスペースが提供されるため、その場所の独立性やプライバシーを確保できるかがポイントとなります。オープンスペースのみのオフィスや、簡易的な仕切りしかない場所は、営業所としての要件を満たすことが難しい場合があります。

しかし、個室が提供されるレンタルオフィスや、しっかりとしたパーテーションで区切られたスペースがある共有オフィスは、営業所としての要件を満たす可能性が高まります。

最終的には、所轄の公安委員会や警察署と相談し、具体的な場所の条件を確認することが重要です。申請に際しては、オフィスの間取り図やレイアウト、契約内容などを準備しておくとスムーズです。

コワーキングスペースやレンタルスペースは別途記事を書いていますので、こちらも参考にして下さい。

自宅をビジネスの拠点として使う際、住所情報はどうなるの?

営業所として使用する場合、その住所が公然と公開されることは基本的にはありません。しかし、自社のECサイトやオンラインモールなどで商品の販売を行う場合は注意が必要です。

例えば建設業の許可を取得した場合、事業者の名前や営業所の住所はWEB上で誰でもアクセスして検索可能です。しかし、古物商として許可を得た場合、そのような情報は一般に公開されることはありません。
そのため、自宅を営業所として登録しても、その住所が公になることはなく、安心してビジネスを行うことができます。

ただし、ECサイトやネットショップモールなどオンラインで商品を販売する際、特定商取引法に基づき、サイト上に事業者の氏名や住所、連絡先を明示する必要があります。これは、ネットオークションやメルカリ等のネット上の売買サービスを利用する際も同様です。

従って、オンライン販売をメインに活動する場合、自宅を営業所として使用することで、その住所をインターネット上に公開するリスクが伴います。この点を理解した上で、適切な判断を行うことが大切です。

※通信販売の定義や詳細については、事業の内容や形態によって異なる場合があります。不明点や疑問点がある場合は、公式なソースや専門家に相談することをおすすめします。

営業所の位置選びとその影響

古物商としての営業所は、単なる取引や保管の場所を超え、ビジネスの信頼性やブランドイメージを形成する重要な要素となっています。

営業所の位置は、古物商としての集客や取引の効率性に大きく影響します。繁華街や交通の便が良い場所に営業所を構えることで、多くの顧客との接点を持つことができます。逆に、立地が不便な場所では、顧客の取引のハードルが上がる可能性があります。

営業所のデザインとブランドイメージ

営業所の内装やデザインは、古物商としてのブランドイメージを形成する要素の一つです。清潔感のある明るい店内や、商品の展示方法など、細部にわたる配慮が求められます。顧客が店内に入った瞬間に感じる雰囲気や安心感は、リピート率や口コミにも繋がるため、営業所のデザイン選びは非常に重要です。

営業所の安全性と信頼性

古物商の営業所は警察官による立ち入り調査が行われることもあるため、営業所の安全性や取引の透明性を保つことが求められます。また、顧客からの信頼を得るためにも、安全性や信頼性の確保は不可欠です。例えば、防犯カメラの設置や、明確な取引記録の保管など、営業所としての安全対策を徹底することが重要となります。

営業所とデジタル化の関係

今の時代はECサイトやネット上の個人売買、オークションサイトでの取引などオンライン取引が増加しています。しかし、営業所の存在感は変わらず、オンラインとオフラインの融合が進む中、古物商としての営業所の役割も変化してきています。例えば、オンラインでの取引をサポートするためのカウンターや、商品の実物を展示するスペースなど、デジタル化と営業所の機能が融合した新しい形の営業所が求められています。

古物商としての営業所は、取引の場所だけでなく、ビジネスの核となる存在です。立地やデザイン、安全性、そしてデジタル化との関係性をしっかりと考慮し、最適な営業所選びを行いましょう。今後の古物商ビジネスの成功のために、営業所の重要性を再認識することが必要です。

事務所概要

事務所名タケウチ行政書士事務所
行政書士竹内 聡貴
所在地〒536-0013 大阪府大阪市城東区鴫野東1丁目14-19
電話番号06-7502-6184
FAX番号06-6734-3742
E-MAILoffice(アットマーク)take.osaka.jp 
※(アットマーク)を@にして下さい
事務所サイトhttps://office.take.osaka.jp/
決済方法銀行振込
インボイス登録番号T1810061634495
事務所報酬以外の必要経費銀行振込の場合、振込手数料
許可申請に係る役所への手数料
許可申請書作成のコピー代・郵送料など
公的書類(登記簿謄本など)の発行手数料
※申請する役所への交通費をお願いする場合があります。

この記事を書いた人

タケウチ行政書士事務所代表

特定行政書士 竹内 聡貴

日本行政書士会連合会 19260966号
大阪府行政書士会 007757号
申請取次行政書士(大阪出入国在留管理局長承認
公益法人コスモス成年後見サポートセンター会員 No.2603345